対中関税賦課を共和党は批判、民主党には肯定的な意見も

(米国、中国)

ニューヨーク発

2018年06月19日

米通商代表部(USTR)による1974年通商法301条に基づく対中関税賦課の発表(2018年6月18日記事参照)に対して、上下両院の関税に関連する委員会では、共和党指導部と民主党指導部の間で反応が分かれた。共和党議員が関税を賦課するトランプ大統領の決定に否定的な姿勢を示す一方、民主党議員には肯定的な声もあった。

共和党議員は関税賦課に否定的

下院歳入委員会のケビン・ブレイディ委員長(共和党、テキサス州)は、中国政府の不正で有害な貿易慣行に挑むことは必要とする一方で、「追加関税の賦課は、米国の製造業者や農家、労働者、消費者を害する」との声明を出した。その上で、政権が新たに追加した関税品目リスト(注1)の対象をより狭めるよう、USTRに求める、と述べた。また、製品別適用除外申請制度については、1962年通商拡大法232条に基づく鉄鋼・アルニムニウムの関税賦課に対して商務省が実施している制度を「問題あるもの(problematic)」と呼び、より実効的な制度が必要だと主張している(注2)。

上院財政委員会のオリン・ハッチ委員長(共和党、ユタ州)も、中国政府の技術移転策に関する不公正な慣行に挑むトランプ大統領の姿勢を評価する一方で、関税賦課には反対した。「米国経済を弱体化させ、同盟国を阻害し、米国のビジネス、農畜産家に対する他国からの報復措置を招く的外れな貿易政策は、中国の不公正な貿易政策と対峙(たいじ)するわれわれの国力を衰退化させる」と批判している。

また、ポール・ライアン下院議長(共和党、ウィスコンシン州)とミッチ・マコーネル上院多数党院内総務(共和党、ケンタッキー州)は声明を出していないが、マコーネル上院議員は4月、貿易紛争に対する懸念を表明し、トランプ政権による対中関税賦課に否定的な発言をしている(議会専門誌「ザ・ヒル」4月4日)。中国が報復関税を賦課する品目リストには、マコーネル議員の選出区ケンタッキー州を主要生産地とするウイスキーなどが含まれている。

米国商工会議所やビジネス・ラウンドテーブル、全米製造業者協会(NAM)など、米国の主要ビジネス団体は、関税賦課に反対する声明を出した。中国の不公正な貿易慣行に関する是正策として、関税賦課は適切な手段ではない、と批判している。

民主党議員は対中措置に評価と懸念

一方、チャック・シューマー上院少数党院内総務(民主党、ニューヨーク州)は6月25日のツイッターで、「トランプ大統領の中国に対する措置は適切だ。中国はわれわれの真の貿易敵国(trade enemy)であり、中国による知的財産権の窃盗や公正な環境でわれわれの企業が競争することを拒否する行為は、数百万人もの米国の将来の雇用を脅かす」とトランプ政権を評価した。

また、上院財政委員会のロン・ワイデン少数党筆頭委員(民主党、オレゴン州)は「本日の(関税賦課の)決定が中国の真の改革を生み出すための一貫した戦略の始まりであれば歓迎する」としつつも、「今回の措置も、他のトランプ政権の貿易措置のように戦略的なものではなく、衝動的なものであることを懸念している」とも述べた。

下院歳入政員会のリチャード・ニール少数党筆頭委員(民主党、マサチューセッツ州)も「対中関税賦課に向けた重要な前進」と中国への関税賦課は支持するものの、対中戦略に一貫性がないと批判もした。

ナンシー・ペロシ下院少数党院内総務(民主党、カリフォルニア州)は、本件について発言していない。

なお、トランプ大統領は6月18日、中国政府の報復関税への対抗措置として、新たに10%の関税を賦課する2,000億ドル相当の中国製品を特定するよう、USTRに指示した。ライトハイザーUSTR代表は同日、大統領からの指示を受け「USTRは、中国の(報復関税賦課)行為を相殺するため、関税案を準備している」と表明している。

(注1)6月15日に公表された関税リストには、USTRが4月6日に対象品目リストの案として提示し、パブリックコメントの対象となっていた1,333品目には含まれない284品目が新たに追加されている。これらの品目は、7月6日の第1弾の関税賦課の対象にはなっておらず、今後パブリックコメントや公聴会を別途、経た上で最終確定される。

(注2)商務省が実施している鉄鋼・アルミニウムに関する関税賦課の製品別適用除外プロセスについては、申請書類の審査時間の長さなどについて、超党派の議員らから批判の声が上がっている(2018年5月14日記事参照)。

(鈴木敦)

(米国、中国)

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