新たなビザや長期投資でスタートアップを呼び込み

(英国)

ロンドン発

2018年06月22日

6月11日から17日にかけて開催された「ロンドン・テックウイーク」の会期中、国や地方自治体のトップは、英国とロンドンの魅力を熱心に訴えた。

サディク・カーン・ロンドン市長は11日の開幕セレモニーで、ロンドンにはパリとベルリンの合計の2倍を超える758の人工知能(AI)関連企業が存在するとの調査結果を披露し、先端産業におけるロンドンの優位性を強調。その上で、住宅や公共施設向け通信インフラの大幅な拡充や公共サービスにおけるデータ共有の拡充、サイバーセキュリティーの強化などを行うと発表し、ロンドンを世界有数のスマートシティーにするとの意欲を示した。

テレーザ・メイ首相も13日、国内外の有力企業や投資家らを招待して意見交換会を開催。企業価値10億ドル超の欧州のスタートアップ34社のうち13社は英国企業だと紹介するなど、スタートアップの集積における英国の実績を訴えた。

また、同日、新たな入国ビザ「スタートアップビザ」を2019年春に導入すると表明した。英国で起業する外国人やその支援者などを対象とし、今後も英国外から優れた人材を呼び込んで技術・イノベーション産業の集積を加速させるのが狙いだ。

さらにメイ首相は、英国の有望企業に長期投資の資金を提供するため、政府傘下の英国ビジネス銀行を通じて25億ポンド(約3,625億円、1ポンド=約145円)を拠出することも発表。同計画には50億ポンド程度の民間資金も呼び込み、長期投資で企業の成長を後押しする。

英国の産業界は、EUからの離脱(ブレグジット)を控え不透明な見通しの中にあり、一部機能を大陸欧州に移転する動きもみられる。そのような中にあって、新たな投資計画や前向きな政策が数多く発表された今回のロンドン・テックウイークは、ブレグジット後の地盤沈下を避けたい英国、ロンドンにとって明るい材料になったといえるだろう。

写真 見本市「TechXLR8」の会場には多数のピッチ(短時間のプレゼンテーション)、セミナー会場が設けられ、多くの来場者でにぎわった(ジェトロ撮影)

(宮崎拓)

(英国)

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