強制火災・爆発保険の料率改定で企業に影響も

(ベトナム)

ハノイ発

2018年06月20日

強制火災・爆発保険に関する政令23/2018/ND-CPの施行から2カ月が経過し、当地では企業活動に一定の影響が出ている。

政令23/2018/ND-CP(以下、「政令23」)は、前身となる政令130/2006/ND-CPおよび関連政令・通達に代わるものとして、4月15日に施行された。政令23の規定中、特に企業への影響が大きいのが周辺諸国と比べ低かったとされる保険料率の改定だ。保険料率は施設の規模や用途に応じて設定され、これまでは通達220/2010/TT-BTCに基づき最大25%の割引が可能だったが、政令23では保険料率が改定され(表参照)、割引が認められなくなった。

改定により、木材製品生産施設が0.263%(割引前の標準保険料率)から0.50%に引き上げられるなど、一部施設で保険料率が上昇しており、当地日系保険会社によると、「感覚的には多くの企業が料率で実質1.5~2倍強の引き上げになった」という。なお、1構内の資産の総保険金額が1兆ドン(約49億円、1ドン=約0.0049円)を超える場合には、保険会社と同意した保険料率を適用することができる。

表 主な対象施設の保険料率

適用対象は政令79/2014/ND-CPPDFファイル(683KB)の付属書IIに記載の施設とされ、各種オフィスは「6階建て以上または2万5,000立方メートル以上」から「5階建て以上または5,000立方メートル以上」に、可燃物または可燃物で梱包(こんぽう)された不燃物の倉庫は「5,000立方メートル以上」から「1,000立方メートル以上」に対象が拡大された。このほか、火災・爆発の危険度が A・B・C・D・E(注)に該当し、1,000立方メートル以上のメイン製造ラインを持つ大量生産工場が新たに対象となった。

保険非加入の場合は罰則も

当地日系コンサルタントによると、「政令23の主な目的は、加入率の低い地場企業の加入促進」と推測される。一方で、ハノイ市周辺の工業団地では消防当局による監査の際、日系企業が火災・爆発保険の加入を確認された事例もあり、留意が必要だ。

加入対象となる企業が非加入の場合、政令167/2013/ND-CPに基づいて6,000万~1億ドンの過料が科されるほか、違反が悪質な場合には、営業停止、営業許可剥奪などの措置が取られる。加入対象となる企業は、未加入の場合は加入手続きを進め、加入している場合も現在の保険が政令23の基準を満たしていなければ、適合した内容に切り替えるなどの対応が求められる。

(注)火災・爆発の危険度は、国家技術規格QCVN06/2010/BXDPDFファイル(1.2MB)の付録Cに基づく。

(佐々木端士)

(ベトナム)

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