移民問題でラッド内相が辞任、後任もEU残留派

(英国)

ロンドン発

2018年05月08日

アンバー・ラッド内相が4月29日、辞任した。今回の辞任は、強硬な移民政策への反発と、移民排除の目標を記したとされる文書の流出に対して責任を取ったものとみられている。

英国では、テレーザ・メイ首相が内相だった2014年に導入された移民法の下、厳しい移民規制が取られていた。英国には、第二次世界大戦後に労働者不足を背景に、旧植民地から流入したいわゆる「ウインドラッシュ世代」と呼ばれる移民がいる。彼らの中には、移民規制が比較的緩やかな時代に親のパスポートなどのみで英国に入国し、自身の定住資格を持たずにいた人も少なくない。近年のより厳しい英国の移民規制では、そのような移民も規制の対象としており、流出した文書によると、2016年度には1万2,503人の移民が国外へ強制退去処分になったとされている。

EU離脱後、諸外国と新たな友好関係を築く必要がある英国にとっては、旧植民地国からの移民に対する厳しい取り締まりは逆風となる可能性があるが、このような状況は4月16~20日に開催された英連邦首脳会議の前後で大きく報道され、各国に対しメイ首相が謝罪した。ラッド内相も4月23日に状況の是正が必要との声明を出し、移民排除の目標の存在に関しても国会で否定していたが、その後、移民の退去数を年間10%増加させることを目標にしたとされるメイ首相宛ての文書が流出し、「誤解を招いた」として責任を取り辞任するに至った。

後任には、住宅・コミュニティー・地方政府相だったサジード・ジャビド氏が任命された。政治情報サイト「ポリティコ」(4月30日)によると、同氏は英国のEU離脱(ブレグジット)に関してはラッド氏と同様にEU残留派であるとされている。ブレグジット交渉が思うように進まない中、不安定な政権運営を行わざるを得ないメイ首相が、これ以上政権の支持を失うことを避けるべく、閣内のバランスを図ったとみられる。

(木下裕之)

(英国)

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