大統領、通貨急落の混乱終息を宣言
(アルゼンチン)
ブエノスアイレス発
2018年05月21日
マウリシオ・マクリ大統領は5月16日、記者会見を行い、最近の自国通貨ペソ急落による混乱が終息したと宣言した。
中央銀行が5月4日に実施した政策金利の40%への引き上げや、政府の8日のIMFへの支援要請など、通貨安に対する取り組みは国際社会で注目された。最も注目を集めた5月15日のLEBAC(中銀短期債)の借り換えは、同日夕方、全額の6,740億ペソ(約285億ドル)が成功したと発表され、翌16日夕方、ペソが落ち着きを取り戻したことを受け、マクリ大統領が記者会見を行った。
財政規律やインフレ抑制を表明
発言要旨は次のとおり。
- わが国の通貨安に関する騒動はひとまず終息した。
- 必要なのは財政規律。わが国は持っているもの以上に使い続けている状態で、そのことが不安定さを生み出している。今回州知事や上院議員たちとも議論して、70年近く達成できずにいる財政均衡に向けた合意ができた。
- インフレ率の引き下げは不可欠。さらなる雇用創出のためにも必要だ。
- インフレターゲットは楽観的な見通しだったことを反省している。その一環で国民に中銀の独立性を疑わせるような動きをした。中銀の独立性は守る。
- IMFとの協議は合意をもたらすだろう。わが国は何も隠し立てすることもなく、条件の内容もこれまでわが国が取り組んできたことと何も変わらないだろう。
マクリ大統領としては、国際社会を巻き込みかねなかった通貨急落への対応に落ち着きをもたらすことに成功したともいえる。ただし、特に為替相場やインフレ率については、2019年の大統領選を視野に与野党間の激しい駆け引きが展開されるともいわれている。今後、短期的には下院を通過した公共料金「差し戻し」法案、IMFと交渉が行われている融資に関する協議、そして5月以降のインフレ率の行方が焦点になるとの見方がある。
(注)2017年12月末にインフレターゲットを政府主導で引き上げたことを指す。
(紀井寿雄)
(アルゼンチン)
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