ロシア極東での直接投資が減少、固定資本投資は過去最高

(ロシア)

欧州ロシアCIS課

2018年05月30日

ロシア中央銀行は5月17日、連邦構成体(注)別の2017年の直接投資額(国際収支ベース、フロー)を発表した。ロシア全体のほか、ロシア極東向けについても対内直接投資額(ネット)を前年比較で記載している。

2017年の対内直接投資は、ロシア全体で前年比14.3%減の278億8,600万ドル(表参照)。極東連邦管区では19.1%減の83億9,800万ドルとなり、連邦全体を上回る減少率となった。サハリン州(資源分野)に直接投資が集中する構造に変化はなく、極東全体のシェア93.4%となる79億2,200万ドル(前年比2.3%減)が同州向けとなった。サハ共和国(ヤクーチヤ)、ハバロフスク地方、アムール州、沿海地方は大幅減となり、ハバロフスク地方では投資額がマイナス(引き揚げ超過)を記録している。

表 ロシア極東の直接投資額(ネット、フロー)

一方、連邦政府や政府関連企業は極東地域振興のため、インフラ整備に多額の資金を投入しており、固定資本投資は好調だ。ロシア極東全体では過去最高となる前年比21.6%増の12兆1,736億ルーブル(約21兆9,125億円、1ルーブル=約1.8円)を記録した。特にサハ共和国(ヤクーチア)(3,848億ルーブル、前年比39.7%増)、サハリン州(2,994億ルーブル、24.8%増)、アムール州(1,866億ルーブル、43.8%増)の3つの構成体は前年より大幅増となった。

連邦政府は、新内閣でも極東地域振興を継続する意向だ。ユーリ・トルトネフ副首相兼極東連邦管区大統領全権代表は5月8日、プーチン大統領に書簡でロシア極東の追加的経済振興策を提案した。a.子供のいる世帯への補助金増、b.子供のいる共働き世帯への所得税の免除、c.他地域からの移住を促す企業向け補助金支給、d.極東連邦大学の機能強化、e.サハリン島と本土をつなぐ鉄橋の建設、f.シベリア鉄道の輸送能力強化、g.極東での割引電力料金適用期間の2028年までの延長、h.政府の投資プログラム内で総額の5.5%以上の「極東枠」の確保などを挙げている。連邦政府は、極東への移住者に土地を無償で貸与・譲渡する「極東の1ヘクタール」制度などで極東地域での人口増加を意図しているものの、2017年にはロシア極東の人口は1,700人程度減少している(「コメルサント」紙2018年5月21日)。

(注)ロシア連邦を構成する自治体。日本の都道府県に該当。

(高橋淳)

(ロシア)

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