タイ政府の財政支出とリスク負担がカギ

(タイ)

アジア大洋州課、企画部地域推進班、バンコク発

2018年04月25日

バンコク日本人商工会議所(JCCB)の酒井宗二会頭は、タイ政府主催のシンポジウム(注1)にて、「東部経済回廊(EEC)開発につき、ソムキット副首相が『2年以内にインフラ開発を具現化する』と説明したことで、日本企業は大いに勇気付けられた」と発言し、タイ政府の取り組みを評価した。

日本企業はEECでの新規・追加投資に関心

酒井会頭によると、JCCBの会員企業数は、2018年3月時点で1,764社に達し、会員企業によるタイでの雇用者数は90万人を超える。上海に次ぐ世界第2位の規模の商工会議所である。また近年は、日本企業のタイへの投資形態が、大企業から中小企業、製造業からサービス業やR&Dへと変化し、こうした変化はJCCB会員企業の構成比にも反映されているという。

酒井会頭は「1,000社以上の日系企業が、EEC対象地域に拠点を有している」と推察し、2017年9月に日本政府とジェトロが主催した、経済ミッションによるEEC視察には、600人もの日本企業が参加したことにも言及した(注2)。

こうした日本企業のEECへの関心の高さを踏まえ、JCCBは2017年5月より、会員企業向けに、EECでの投資やビジネス拡大を支援する「EEC委員会」を立ち上げた。タイ政府との間で、日本企業が抱える制度やインフラ面での要望に関し、定期的に意見交換を行っている。

人材育成や官民のリスク分担を要望

在タイ日系企業は、EEC域内への投資に関心を示す一方、タイ政府による(1)インフラ事業へのリスク負担、(2)地域限定的な規制緩和措置の導入、(3)産業高度化に必要な高度人材の育成を求めている。

酒井会頭は、「タイ政府には、高速鉄道など重要インフラ開発計画を予定通り実施すること、人材育成を早急に進めること」を要望した。また、「EEC域内の新規・拡張投資に係る税制優遇措置は、日本企業の先進産業分野への投資を促す措置」と評価しつつ、タイで長年事業を継続し、雇用拡大に貢献してきた既存企業に対しても、継続的なサポートを要請した(JCCB要望は添付資料参照)。

(注1)タイ政府が2018年3月19日、バンコクにて開催した「タイ~新たな次元へ飛躍」シンポジウム。

(注2)同ミッション参加企業にジェトロが実施した事後調査(2017年12月時点)によると、回答企業の25%が「4年以内にタイに新規投資する計画がある」と回答し、51%の企業が「今後タイへの投資を検討する可能性がある」と回答している。

(伊藤博敏、阿部桂三)

(タイ)

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