税制面の競争力向上を狙い利得税率を半減
(香港)
香港発
2018年04月11日
香港特別行政区政府(以下、香港政府)は3月29日、2018年4月以降の課税年度において、2段階の利得税(法人税:Profit Tax)率を導入すると発表した。関連条項を盛り込んだ「2018年税務(修訂)(第3号)条例」を同日付で官報に公示した。2段階税率は香港でビジネス活動を行う全ての実体(entity)に適用される。
税務条例の改正(注)により、法人事業主については、利益のうち200万香港ドル(約2,800万円、1香港ドル=約14円)までは8.25%の税率(従来は16.5%)、200万香港ドルを超過する利益については従来どおり16.5%の税率でそれぞれ課税される。非法人事業主(個人事業主、パートナーシップ)については、200万香港ドルまでは7.5%の税率(従来は15%)、200万香港ドルを超える部分は従来どおり15%の税率にて課税される。
200万香港ドル以下の利益に対する利得税率の半減措置により、法人事業主は最大で16万5,000香港ドル、非法人事業主は最大で15万香港ドルが減税されることとなる。
なお、グループ会社がある場合は、グループ内の会社のうち1社のみが軽減税率を享受できる。
税制を通じた経済発展
香港政府のスポークスマンは「政府の目標は、簡素で低税率な税制を維持すると同時に、競争力のある税制の実施を通じた経済発展の促進にある。2段階の利得税率の導入は、中小企業やスタートアップ企業をはじめとする企業の税負担の軽減を通じ、より有利なビジネス環境を創出するとともに、経済発展の促進、雇用機会の創出を通じた香港の競争力の向上にもつながる」としている。
香港政府は、利得税の2段階制の導入による税収の減収額は、2016/2017財政年度(2016年4月~2017年3月)の利得税収全体の約4%に相当する58億香港ドルに上ると見積もっている。
巨額の財政備蓄は適切に活用
香港政府の財政収支は黒字傾向が続いている。2017/2018財政年度(2017年4月~2018年3月)のうち、2017年4月~2018年2月の財政収支は1,724億香港ドルの黒字、2018年2月末時点の財政備蓄は1兆1,264億香港ドルに達した。香港政府の林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は2017年10月の施政報告において、巨額の財政備蓄を、香港の将来のために適切に活用していくことを表明。その一環として利得税の減税措置の実施を打ち出していた。
(注)官報に公示された税務条例の改正内容を参照。
(中井邦尚)
(香港)
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