決済機能付きポータルサイトと輸出ワンストップセンターを設立

(アゼルバイジャン)

欧州ロシアCIS課

2018年04月05日

アゼルバイジャン政府は経済の原油・天然ガス依存脱却に向け、輸出製品の多角化に取り組んでいる。企業の海外市場へのアクセス支援として、政府は決済機能を持つポータルサイトを開設。さらに政府自身が輸出書類を一括して作成する「ワンストップセンター」を設立した。

2,000社が登録、買いオファーで5億ドル

政府が開設したのはBtoB取引を主としたインタネット・ポータルサイト「Azexport.az外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」。製品の紹介やコミュニケーションツールとしての機能のほか、決済機能「ペイパル(PayPal)」を持たせているのが特徴だ。2017年1月から運用をスタート、現在国内の輸出企業約2,000社が登録している。同サイトを管理する政府系機関「経済改革・コミュニケーション分析センター」のブサル・ガシムリ所長の説明によると、貿易統計上2017年に同国から輸出を行った企業は全体で1,924社とされているが、ほぼ全ての輸出企業が同サイトに登録されているという。

ポータルサイトは決済機能を持つため、セキュリティーにも重点が置かれている。システムはアゼルバイジャン企業とEUの中でもIT先進国といわれるエストニアの企業との合弁企業がマイクロソフト・アズールをプラットフォームとして開発。電子署名データも政府が管理している。電子署名は海外バイヤーでも登録が可能だ。

データベースには輸出者、生産者、製品情報、価格情報、証明に関する情報など、バイヤーが購買に当たって判断の指標となる情報が掲載されている。それ以上のやり取りは個別で行われる。PayPalの利用に関する経費は掛かるが、輸出者・バイヤーなど使用者のデータベース登録・利用は無料。ガシムリ所長によると、運用初年となる2017年は世界70カ国以上の約1,000社から、5億ドル近い買い付けオファーがあったという。一方、政府当局に取引内容を知られたくないとの企業側の強いニーズもあり、運営側でも実際の決済額もしくはポータルサイト外での決済額について把握していないという。

人気のある商品は、トマトなどの生鮮野菜、ナッツ、加工食品など。買い付けオファーの大部分はロシアからで、次にトルコ、ジョージアなど。ポータルサイト内外で行われる輸出者とバイヤーとのやり取りの言語は英語、アゼルバイジャン語、ロシア語となる。輸出者側が英語などに対応できない場合は、運営側の経済改革・通信分析センターでコミュニケーションの支援を行っている。

輸出関連省庁の担当者がワンストップで書類作成

ポータルサイトのほか、もう1つのユニークな取り組みは、国内の輸出企業にとっての「ワンストップセンター」だ。政府が輸出希望企業の代わりにワンストップで輸出関連書類を作成する。ワンストップセンターは経済改革・通信分析センターが入居するビルの1階にあり、ポータルサイトの運営と物理的に一体化している。同センターには関連省庁の担当職員が常駐し、書類の作成に当たっている。具体的には、農業省(食品関係の証明書類など)、環境省(野生動物関連の輸出許可など)、経済省(商業製品関連、原産地証明など)、文化観光省(書籍、音楽などの文化関連など)、税関が同じフロアにある。輸出業者ではなく、許認可を持つ政府が書類を作成する。

DHLやFEDEXといった国際クーリエ業者やアゼルポストなどの郵便業者、ビューロベリタスなどの第三者認証機関、銀行、保険などとも連携しており、センターを経由した一括のサービスを提供している。

シムリ所長は、「2017年の貿易統計で非資源分野の輸出が前年比で25%伸びた。綿花の輸出なども増えている。われわれの事業は非資源分野の輸出増に貢献している」とし、「アゼルバイジャンが小さい国であることがこのサービスを可能としている。『小ささ』を『優位』に変えることが重要」と、事業成果の拡大に向け意欲を述べた。

アゼルバイジャンは国家収入の大部分を原油と天然ガスの売却益に依存している。2014年以降の資源価格の下落により、アゼルバイジャン経済はCIS地域で最も大きな打撃を受けた。2017年のGDP成長率は政府発表で0.1%増、国際機関発表ではマイナス成長となっている。この状況を打破すべくイルハム・アリエフ大統領は2016年12月、「戦略的ロードマップ」を承認。現在11の代表的産業分野を中心に経済の多角化を進めている。

写真 農業省、環境省、経済省の担当者が机を並べるワンストップセンター(ジェトロ撮影)

(高橋淳)

(アゼルバイジャン)

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