2017年の外国製造業投資、前年比21.4%減
(マレーシア)
クアラルンプール発
2018年03月30日
マレーシア投資開発庁(MIDA)は3月6日、2017年のマレーシア投資実績報告(Investment Performance Report 2017)を発表した。製造業の投資認可額は636億リンギで前年比8.9%増加したが、そのうち、外国からの投資認可額は前年比21.4%減の215億リンギにとどまった。国・地域別の製造業投資認可額は、中国が38億リンギ(案件数21件)で首位、日本は13億リンギ(同41件)で7位となった。
外国製造業による投資認可額は前年比21.4%減
MIDAの発表によると、製造業分野における国内外からの投資認可総額は、前年比8.9%増の636億8,480万リンギ(1リンギ=約27円)に達した。国内の製造業投資認可額が、前年比35.6%増と大幅に増加し、全体を押し上げた。なかでも、ジョホール州ペンゲランで開発中の総合石油施設の案件が認可されたことが大きい。他方、外国からの製造業投資認可額は前年比21.4%減の215億4,300万リンギと落ち込んだ。内訳をみると、拡張・多角化を目的とした投資が138億5,420万リンギと、新規投資の76億8,880万リンギを大きく上回った。ムスタパ国際貿易産業相は、「外国企業による拡張・多角化投資の増加は、マレーシアの好調な経済や投資政策などが魅力的である証拠だ」と強調した。これらの投資案件のほとんどが高技術・高付加価値製品の製造に対する投資だという。例として、オスラム、ボッシュ、ビーブラウンなど欧州企業のほか、日本企業としてシバタ工業などの案件が挙げられた。
業種別では電気・電子製品、国別では中国が首位
製造業における外国投資認可額を業種別にみると、電気・電子が前年比2.7%増の81億5,510万リンギで全体の37.9%を占め、5年連続首位となった(表1参照)。次いで、非金属鉱物製品が前年比117.3%増の41億2,390万リンギ、化学・同製品が同74.1%増の24億2,040万リンギ、科学・計測機器が同31.3%増の15億5,600万リンギ、輸送機器が同11.2%減の15億230万リンギの順で続き、これら上位5業種で全体の82.4%を占めた。
国・地域別では、中国が38億5,450万リンギ(件数21件)で2年連続1位となったが、前年比19.3%減と減少幅は大きかった(表2参照)。以下、スイス(前年比4.7倍、24億4,400万リンギ、7件)、シンガポール(同9.1%増、23億700万リンギ、100件)、オランダ(同36.8%減、20億3,390万リンギ、13件)、ドイツ(同42.7%減、15億1,690万リンギ、18件)と続いた。これら上位5ヵ国で全体の過半数(56.3%)を占め、121億5,628万リンギに達した。大幅に増加したスイスは、2017年11月にネスレが国際調達ハブを設置した案件が寄与したものとみられる。
日本からの製造業投資認可額は3割減
日本からの投資認可額は前年比29.6%減の13億1,074万リンギとなり、7位にとどまった(表3参照)。他方、投資案件数は41件と、上位国ではシンガポールの100件に次いで多く、小規模ながら多くの投資が行われた。業種別でみると、電気・電子製品が全体の31.5%を占め前年比9.4%増の4億1,343万リンギだった。2位以下は、繊維・同製品が前年比37.8倍の3億1,670万リンギ(4件)、食品製造が同23.3%増の2億6,382万リンギ(1件)、輸送用機器が同87.8%減の8,132万リンギ(6件)、プラスチック製品が同76.7%減の6,460万リンギ(1件)の順だった。
また、日本からの製造業投資認可額を州別でみると、セランゴール州が投資案件13件の5億3,360万リンギと首位だった。ついで、ペナン州(13件、3億8,223万リンギ)、ケダ州(4件、2億560万リンギ)が続いた。
プリンシパル・ハブ・インセンティブの活用企業増加
マレーシア政府は国内におけるグローバル・ビジネス拠点機能強化を目的とした優遇措置である「プリンシパル・ハブ・インセンティブ」を2015年より導入し、2017年末時点で多国籍企業を中心に28社が認可された。そのうち、9社は2017年中に認可を受けた。例として、大手食品メーカーであるスイスのネスレ、大手家具メーカーであるスウェーデンのイケア、大手電子制御システムや自動化機器メーカーであるアメリカのハネウェル、日本の電子楽器メーカーのローランドなどがそれぞれ地域統括拠点を設置した。ムスタパ大臣は、「2018年には、さらに12社のプリンシパル・ハブの認可を目指す」と述べた(ザ・スター紙、3月7日付)。
2017年の製造業における外国投資認可額は前年比21.4%減と2桁減となったが、上半期の前年同期比23.6%減と比較すると下半期はやや回復の兆しが見られた(2017年11月27日付記事参照)。MIDAは2018年も経済の好調が続くことを背景に、プリンシパル・ハブや高付加価値な電気・電子製品製造業を中心とした外国企業のさらなる投資を見込む。
(エスター頼敏寧、田中麻理)
(マレーシア)
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