外国人の中技能向けSパス発給基準を厳格化

(シンガポール)

シンガポール発

2018年03月19日

人材省は2019年1月からSパス発給基準となる基本月給を段階的に引き上げるなど、発給基準を一段と厳格化する。また、幹部・専門職向けの「エンプロイメント・パス(EP)」について、申請前の求人広告掲載義務の対象範囲を拡大する。

求人広告掲載義務の対象を拡大

リム・スイセイ人材相は3月5日、国会の2018年度人材省予算審議で、中技能外国人向けの就労許可証「Sパス」の発給基準として、2,200シンガポール・ドル(約17万8,200円、Sドル、1Sドル=約81円)の基本月給を2019年1月1日から2,300Sドルに引き上げると発表した。さらに、2020年1月1日からは2,400Sドルへと引き上げる。

さらに同相は、EPの求人広告掲載義務の対象を拡大するとした。人材省はこれまではEP申請前の求人広告掲載義務について、25人以上を雇用している企業で、基本給が月1万2,000Sドル未満のポストを申請する場合を対象にしてきたが、7月1日からは、社員10人以上を雇用している企業で、基本給が月1万5,000Sドル未満のポストを申請する場合に対象を広げる。

現在、外国人労働者は就労者数の約3分の1以上を占めている。人材省は外国人労働者の技能や学歴、就労経験、賃金に応じて異なる種類の就労許可証を発給している。幹部・専門職についてはEP(基本月給3,600Sドル以上)のほか、中技能職にSパス、建設労働者や工場労働者など低技能職に「ワーク・パミット(WP)」が発給される。2017年6月時点で外国人労働者は137万人、このうちEPが13.8%、Sパスが13.0%、WPが71.0%を占めている。人材省は2010年以降、それまでの外国人の積極的な受け入れ政策を転換し、外国人就労許可証の発給基準を年々厳格にしている。

今回の外国人就労許可証の発給基準のさらなる厳格化は、外国人労働者の質と労働生産性を向上させるとともに、就労者数が伸び悩んでいることを踏まえ、国民に質の良い雇用を確保する狙いもある。リム人材相は、就労者の増加数が2015~2017年は年間平均1万人を割っており、2012~2014年の10万人を大きく下回っていると指摘した。就労者数は2017年に前年を割り込んで、2003年以来の初のマイナスとなっていた(2018年3月5日記事参照)。

国民の幹部登用が少ない企業は500社

このほかリム人材相は予算審議の中で、国民の幹部登用が業界平均と比べて少ないと見なした警告リスト(ウオッチリスト)の対象企業が過去2年間で約500社に上ったことを明らかにした。警告リストの対象となった企業は、政労使代表からなる「公平で革新的な雇用慣行のための政労使連合(TAFEP)」によって、国民の登用に向けた雇用体制の改革が指導され、原則6カ月以内に改善が認められなければ、EPの申請権限を剥奪される。同相によると、500社のうち150社は改革が認められてリストの対象から抜け、残り350社のうち60社については改革に非協力的で改善が見られないとして、EPの申請権限を剥奪したという。

人材省は2014年、国民の雇用を促進するために「公平な採用検討のためのフレームワーク(FCF)」を開始、業界平均と比べて地元人材の幹部登用が少ない企業に直接是正を求める指導を開始した。2015年8月からFCFの運用を本格化し、TAFEPはEPの申請企業が地元人材を平等に幹部に登用しているか審査を始めていた(2017年11月7日記事参照)。

(本田智津絵)

(シンガポール)

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