過去最高を更新し、2年連続で世界第2位に(中国1)-2016年の中国企業の対外直接投資動向-

(中国)

北京発

2018年03月30日

2016年の中国の対外直接投資(フロー、ネット)は、前年比34.7%増の1,961億ドルとなり、史上最高を記録した。地域別では、アフリカへの投資が減少したものの、中南米や北米への投資が増加した。ストックベースでは、中国が世界の対外直接投資ストックに占める構成比は5.4%にまで上昇し、世界での順位は前年の8位から6位に上昇した。中国企業の2016年の対外直接投資動向を2回に分けて報告する。

2年連続で資本の純輸出を実現

中国の商務部、国家統計局、国家外貨管理局は9月30日に合同で「2016年度中国対外直接投資統計公報」を発表した。2016年の中国の対外直接投資(フロー、ネット)は、前年比34.7%増の1,961億ドルとなり、史上最高を記録した。商務部は2016年の対外投資の特徴として、以下の8点を挙げた。

  1. 2016年の中国の対外直接投資(フロー、ネット)は、2年連続で世界第2位となり、対外直接投資が、2年連続で対内直接投資を上回り資本の純輸出を実現した。2016年の世界の外国直接投資(フロー、ネット)が前年比2%減の1兆4,500億ドルと減少したなか、中国の対外直接投資は前年比34.7%増の1,961億ドルとなり、史上最高を記録した。全世界の外国直接投資額に占める中国の割合が初めて1割を超えた。
  2.  2016年末時点で、中国の2万4,400の投資主体が外国で3万7,200社の企業を設立し、投資の範囲は世界の190ヵ国・地域に及んだ。中国の対外直接投資ストックは1兆3,574億ドルとなり、世界の対外直接投資ストックに占める構成比が5.2%にまで上昇し、世界での順位は前年の8位から6位に上昇した。
  3. 2016年の中国企業によるM&Aは765件で、74の国・地域において実施され、金額と件数がともに史上最高となった。M&Aの金額は1,353億ドルで、うち直接投資は865億ドル(構成比は63.9%)、融資は488億ドル(36.1%)となった。M&Aの分野は「製造業」「情報、コンピュータサービス、ソフトウェア」「交通・倉庫・郵便」など18の業種に及んだ。
  4. 一部の国・地域に対して投資が集中した。2016年の香港、米国、ケイマン諸島、英領バージン諸島に対する投資額の合計は1,570億ドルで全体の80.1%を占めた。うち米国への投資は前年比2.1倍の170億ドル、EUへの投資は82.4%増の100億ドルだった。投資ストックの分布をみると、84.2%が開発途上国、14.1%が先進国、1.7%が移行経済国であった。
  5. 中国の対外直接投資の分野は国民経済に関わるすべての分野に及んだ。中でも「リース・ビジネスサービス」「製造業」「情報、コンピュータサービス、ソフトウェア」の伸び率はそれぞれ81.4%増、45.3%増、2.7倍と高かった。「リース・ビジネスサービス」「金融」「卸・小売り」「鉱業」「製造業」の5分野の投資ストックを合計すると構成比は全体の79.7%を占めた。
  6. 2016年の対外直接投資(フロー)において新規株式投資は前年比18%増の1,141億ドルで、全体のフローの58.2%を占めた。収益再投資は307億ドルで全体の15.6%を占めた。債券投資は前年比4.6倍の514億ドルで全体の26.2%を占めた。
  7. 非金融類の投資のうち8割以上を地方企業の投資が占めた。2016年の地方企業の対外直接投資(フロー)は前年比60.8%増の1,505億ドルで、全体の83%を占めた。ストックをみると、地方企業の対外投資ストックは5,241億ドルで、構成比は前年比7.7ポイント上昇し44.4%となった。
  8. 中国の海外企業(境外企業)の投資先での納税額は約300億ドルにのぼり、2016年末におけるそれら企業の外国人の雇用者数は前年同期比12万人増加し134万人となった。

中南米への投資が2.2倍に増加

投資のフローを主要地域別にみると、表のとおりである。構成比が最大のアジアへの投資は前年比20.2%増の1,303億ドルとなったものの、構成比は8ポイント下落した。なお、アジアへの投資に占める香港の割合は前年から4.8ポイント上昇し87.7%となった。中南米への投資は2.2倍の272億ドル、北米は89.9%増の204億ドル、欧州は50.2%増の107億ドルとなった。一方でアフリカへの投資は、19.4%減の24億ドルとなった。

2016年の伸び(34.7%増)への寄与度をみると、アジアが15.0ポイントと最も大きく、次いで中南米(10.0ポイント)、米州(6.6ポイント)の順となった。欧州は2015年の寄与度がマイナス3.0ポイントで押し下げ要因となっていたが、2016は2.5ポイントとなった。アフリカはマイナス0.4ポイントとなった。

対外投資(フロー)の上位5ヵ国・地域は、香港(1,142億ドル、構成比58.2%)、米国(170億ドル、8.7%)、ケイマン諸島(135億ドル、6.9%)、英領バージン諸島(123億ドル、6.3%増)、オーストラリア(42億ドル、2.1%)で、これらへの投資の合計は1,612億ドルとなり全体の82.2%を占めた。日本への投資は、前年比69.9%増の3億ドルとなった。構成比は0.2%と依然低い水準にとどまる。

(藤原智生)

(中国)

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