生産・販売ともに過去最高を更新するも伸び率は大幅に鈍化-2017年の中国の自動車生産・販売動向-

(中国)

北京発

2018年03月30日

中国における2017年の自動車生産台数は2,901万5,000万台(前年比3.2%増)、販売台数は2,887万9,000台(3.0%増)と、ともに過去最高を更新した。しかし、政府が2015年10月から実施した車両購入税の減税幅が2017年には縮小されたことなどにより、2016年の伸び幅と比較すると生産台数は11.3ポイント縮小、販売台数は10.6ポイント縮小した。日本ブランド車の販売シェアは、急激にシェアを落とした韓国ブランドの代替需要を取り込み、1.4ポイント拡大した。

車両購入税の減税率の引き下げが下押し圧力に

中国自動車工業協会の発表(1月11日)によると、2017年の自動車生産台数と販売台数ともに過去最高を更新した一方、2016年の伸び幅と比較すると生産台数、販売台数はともに二桁の縮小となった。同協会は2017年の自動車業界について、新エネ車政策の調整による影響や、排気量1.6リットル以下の乗用車を対象とした車両購入税の減税率の引き下げ(通常税率10%が、2016年末までは5%、2017年初~同年末までは7.5%に引き下げ)が、生産・販売に対する下押し圧力になったとした。そのうえで、2017年の生産・販売台数の実績は年初予測(5%増)よりは低かったものの、好成績であった2016年の実績のうえで実現したものであるとし、業界全体としては穏やかな成長を遂げたと評価した。

車種別ではSUVの販売が増加

乗用車の生産・販売台数はそれぞれ2,480万7,000台(前年比1.6%増)、2,471万8,000台(1.4%増)となり、伸び率は2008年以来の低い水準に落ち込んだ。自動車の生産に占める乗用車の割合は85.5%(前年比1.3ポイント減)、販売台数に占める割合は85.6%(1.4%減)となった。車種別の販売台数では、セダンが前年比2.5%減の1,184万8,000台、スポーツ用多目的車(SUV)は13.3%増の1,025万2,700台、多目的車(MPV)は17.1%減の207万700台、クロスオーバー車は20.0%減の54万7,000台となった(添付資料の表1参照)。

排気量1.6リットル以下の乗用車の販売台数は1,719万3,000台で前年同期比1.1%減となった。市場シェアは1.8ポイント縮小し69.6%となった。また、排気量1.6リットル以下の中国ブランド車(乗用車)の販売台数は前年比0.4%減の837万4,000台となった。

企業別販売台数ランキングでは、企業グループ別では上汽集団が691万6,400台、東風集団が412万700台、一汽集団が334万6,000台という順位となった。企業別の乗用車の販売台数では上汽大衆が206万3,100台、上汽通用が199万8,700台、一汽大衆が196万7,200台となった(添付資料の表2参照)。

コストパフォーマンスが高い中国ブランドのSUVが好調

中国ブランド車(乗用車)の販売台数は1,084万7,000台で販売シェアは前年比0.7ポイント拡大し43.9%だった。特に中国ブランドのSUVの販売が前年に引き続き好調で、前年比18%増の621万7,000台を売り上げ、全SUV販売台数の60.6%を占めた。

外国ブランド車(乗用車)の販売シェアをみると、1位がドイツ系の19.6%、2位が日系の17.0%、3位が米国系の12.3%となった。伸び率をみると日系が前年比10.9%増、ドイツ系が7.5%増と好調だった。一方韓国系は36.1%減、フランス系は29.2%減と大幅に減少した(添付資料の表3参照)。韓国系の急減の要因は、韓国への高高度防衛ミサイル(THAAD)の設置問題が影響したと思われる。フランス系の不振については、好調なSUVの市場に合致するモデルを欠いたことが一因とみられる。

ブランド別の年間売上台数ランキングでは、1位が五菱宏光(MPV:上海通用五菱[GM])で54万台、2位が朗逸(セダン:上海大衆[VW])で51万台、3位が哈弗H6(SUV:長城汽車)で51万台、 4位が英朗(セダン:上汽通用別克[GM])で42万台、5位が軒逸(セダン:東風日産)で41万台だった(添付資料の表4参照)。

上位10ブランドのうち、セダンは5車種でいずれも外国ブランド車であった。一方でSUVとMPVは、中国ブランド車も上位に食い込んだ。SUVではドイツブランドの途観(上汽大衆[VW])の価格帯が200~238万元(約3,200~3,808万円、1元=約16円)に対し、中国ブランド車の哈弗H6(長城汽車)、伝祺GS4(広汽乗用車)は90万元~162万元で割安感のある価格設定となっており、消費者の購買要因に繋がったとみられる。

なお、自動車の輸出については、前年比25.8%増の89万1,000台だった。伸び率は2016年実績(2.7%減)より28.5ポイント上昇し、5年ぶりに増加に転じた。このうち、乗用車の輸出は、34%増で63万9,000台、商用車は8.9%減の25万2,000台だった。

オートバイは、生産が1,714万6,000台(前年比1.9%増)、販売は1,713万5,000台(2%増)で6年ぶりに増加に転じた。

電気自動車は堅調な伸び

新エネルギー車(NEV)の販売は前年比53.3%増の77万7,000台と堅調に伸びているが、2014年(前年の4.2倍)、2015年(4.3倍)と比較すると低い伸びとなった。

なお、NEV販売の内訳は、電気自動車(EV)が82.1%増の46万8,000台、プラグインハイブリッド車(PHEV)が39.4%増の11万1,000台となった(添付資料の表5参照)。新エネルギー車の販売が堅調な理由としては中国政府の各種補助政策の効果が指摘されている。

中国政府は2012年に発表した「省エネ・新エネルギー車産業発展規画(2012~2020年)」において、EVおよびPHEVの累計生産・販売台数を2015年までに50万台に、2020年までに500万台以上にする方針を打ち出している。

このような政策に加え、上海、広州、北京などナンバープレート取得に対しオークションや抽選などの制度によって制限を課している大都市において、EV購入者に対する取得優遇措置を設けた効果が表れたとみられる。

2018年の販売の伸びは前年比3%を超えない見込み

中国自動車工業協会の師建華副秘書長は、中国の2018年の自動車販売総数の伸び率は「前年比3%を超えない」との見通しを示した(「中国自動車フォーラム組織委員会」2月9日)。車種別では、「SUVの販売台数が乗用車の販売台数を超える見込みであり、販売台数は、前年比11%増と予測している。これが全体の伸びを押し上げる」とした一方、「商用車は1%程度の低い伸びにとどまる」との見通しを示した。地域別の見通しでは、「三、四線都市での新車購入需要が主要な押し上げ要因となる」としたうえで「一、二線都市での買い替え需要も重要である」とした。

(藤原智生)

(中国)

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