2017年の自動車の国内販売・生産は回復基調が続く

(インドネシア)

ジャカルタ発

2018年03月30日

2017年のインドネシアの自動車国内販売台数・生産台数はともに前年比で増加した。販売台数は107万9,534台、生産台数は121万6,615台を記録した。販売・生産とも2015年に底を打ち、その後緩やかな回復が続いている。2018年の国内販売台数について、インドネシア自動車工業会は110万台という目標を掲げている。

国内販売は前年比プラスに

インドネシア自動車工業会(GAIKINDO)の発表資料によると、2017年の国内販売台数(卸売)は前年比1.6%増の107万9,534台となった(注)。国内販売は2015年に底を打ち、2016年から緩やかな回復が続いている。

カテゴリー別にみると、乗用車については販売台数(卸売)が前年比2.1%のマイナスとなった。特にセダンについては、前年比33.9%のマイナスで、直近4年間で販売台数が半分以下に縮小した。セダンの購入にあたっては、30%以上の奢侈品販売税(PPnBM)が課せられるというデメリットもあり(政令2014年22号)、乗用車の販売台数(卸売)に対するセダンの割合は1.1%まで減少した。かわりにSUV、MPV、LCGC(低価格グリーンカー)が市場をほぼ独占する形になっている。多人数が乗車できること、荷物を多く積めること、路面状態が悪い場所でも走行可能であることなどといったインドネシアのニーズを反映し、7人乗りでグランドクリアランスが高い車種が人気だ。LCGCについても、2016年にトヨタが「カリヤ」、ダイハツが「シグラ」という7人乗りモデルを発売し、好調な売り上げを維持している。

自動車市場の拡大への貢献が期待されたLCGCは、2013年に導入されて以降、乗用車の販売台数に占めるシェアを徐々に伸ばし、2017年は27.8%に達した。他方で、乗用車の販売台数(卸売)は頭打ちとなっており、結果として、LCGCがセダン、MPV、SUVといった既存の乗用車市場を侵食した格好になっている。

商用車は前年比17.2%のプラスとなり、特にトラックの販売台数が前年比33.8%のプラスと大きく伸びた。なかでも車両総重量(GVW)が24トン超のトラックが前年比2倍近い伸びを記録した。このような市場環境のなか、GAIKINDOでは2018年3月1日から4日にかけて、商用車専門のモーターショー「GAIKINDO Indonesia International Commercial Vehicle Expo」を初めて開催している。

ブランド別ではスズキ、三菱が躍進

ブランド別に見ると、上位3社(トヨタ、ホンダ、ダイハツ)が揃って販売台数を減少させたが、他方でスズキ、三菱が大きく販売台数を伸ばした。スズキはMPVの「エルティガ」が3万5,338台、ピックアップトラックの「キャリイ」が3万2,021台を売り上げた。また、三菱は2017年9月に発売したMPVの「エクスパンダー」が4か月間で1万3,070台を売り上げるヒットとなった。同じく三菱では、SUVの「パジェロスポーツ」が2万239台、ピックアップトラックの「コルトL300」が2万2,990台、「コルトT120SS」が1万316台を売り上げている。

インドネシアの自動車市場における日本ブランドのシェアは98%を超えているが、2017年の新しい動きとして、中国系完成車メーカーの参入が目立った。2017年7月に販売を開始したウーリン(SGMW MOTOR INDONESIA)は半年でMPVの「コンフェロ」など5,050台を販売し、順調な滑り出しを見せている。また、ソコニンド(Sokonindo Automobile)も2017年末に完成車の生産を開始しており、今後の動向が注目される(2018年2月28日記事参照)。

生産台数は前年比プラス

2017年の生産台数は前年比3.3%増の121万6,615台となった。国内販売同様、2015年に底を打ち、2016年から回復基調にある。ただ、インドネシア国内の自動車生産能力は220万台に達しており(REPUBLIKA.CO.ID、2018年1月16日)、100万台近い余力がある状態だ。

販売台数と比較すると、セダンや4×4の生産台数が比較的多い。セダンについてはトヨタの「ビオス」の中東向け輸出、4×4についてはトヨタの「フォーチュナー」の中東・ベトナム向け輸出が多いことによる。

完成車の輸出は増加傾向が続く

完成車の輸出は前年比18.9%増の23万1,169台を記録した。おもな輸出先は中東、東南アジア、中南米、アフリカとなっている。輸出台数の最も多いトヨタは、SUVの「フォーチュナー」、MPVの「イノーバ」、セダンの「ビオス」など、合計11万6,971台を輸出している。ダイハツはMPVの「アバンザ」(販売はトヨタ)のほか、フィリピン向けにLCGCの「Wigo」(インドネシアでは「アギア」、販売はトヨタ)、日本向けに「タウンエース」(販売はトヨタ)など、合計8万667台を輸出している。このほか、スズキが「APV」や「エルティガ」など2万8,504台を輸出している。

輸出の牽引役であるトヨタの「フォーチュナー」は、インドネシアとベトナムで生産していたところ、2017年より生産をインドネシアに集約し、ベトナム向けに輸出するようになっていた。ところが、ベトナム政府が2017年10月17日に公布・施行した「政令116号」によって、生産国政府が発行する認可証の提出や輸入ロットごと・車両仕様別の排気量および安全性能検査を義務付けたため、ベトナムに対する輸出がストップした状態になっている(2018年1月17日記事参照)。報道によると、インドネシア政府はベトナム政府と交渉を続けている模様だ。

2018年の国内販売市場について、GAIKINDOは110万台という目標を掲げている(CNN Indonesia、2018年1月16日)。足元では鉱業やインフラ建設が活況で、商用車需要の伸びが自動車市場全体を押し上げることが期待されている。

(注)GAIKINDOの統計は、会員企業が提出したデータを集計して作成されており、販売台数には2017年5月以降のメルセデス・ベンツの販売台数は含まれていない。メルセデス・ベンツは2017年5月以降、GAIKINDOへのデータの提出を拒否したため、2018年2月にGAIKINDOを除名された(KOMPAS.com、2018年2月16日)。

(吉田雄)

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