ダウェーSEZ開発には日本政府への期待大-「ダウェー経済特別区(SEZ)視察ミッション」の報告(2)-

(タイ)

バンコク発

2018年03月30日

「ミャンマー・ダウェー経済特別区(以下、ダウェーSEZ)視察ミッション(2月26~28日)」の参加者は、ダウェーSEZを視察した他、ダウェー経済特別区管理委員会、およびタニンダーリ管区政府を表敬訪問した。報告第2回目の今回は、ダウェーSEZ 開発の現状及びミャンマー政府関係者の評価を報告する。

ダウェーSEZの現状

「ミャンマー・ダウェー経済特区(以下、ダウェーSEZ)視察ミッション」の参加者は、旅程2日目にダウェーSEZ内の各施設、および建設予定地を視察した。ダウェーSEZ内の各視察先の概況は次の通りである。

  1. 小規模港湾施設(添付資料写真1):ダウェーSEZ開発業者のイタリアン・タイデベロプメント社(以下、イタルタイ社)が建設し、ダウェーSEZ建設用資材の荷卸しに利用している。深海港が完成するまでは、その他の一般物資の揚げ降ろしにも使用される。
  2. ゼロキロメートルポイント(添付資料写真2):ダウェーSEZは幅18km、かつタイとの国境までの距離は156kmである。その起点となるのが、このゼロキロメートルポイントである。同ポイントの南方にある山が、インド洋で発生したサイクロンの被害から、ダウェーSEZを守る役目を果たしている。
  3. 深海港建設予定地(添付資料写真3):深海港の建設が検討されており、この一帯は砂浜およびラグーンとなっている。ここに掘り込み式の大規模港湾を建設する予定である。
  4. イニシャルフェーズ工場用地(添付資料写真4):27平方キロの用地を、軽工業企業の進出地として、2023年までに順次整備する予定である。既にタイ企業による入居予約もあるが、工事は遅れている。
  5. ワーカー用ドミトリー(添付資料写真5):720人収容(各部屋4人収容で、計180部屋)である。外観はほぼ完成しているが、内装は未着手であった。
  6. 貯水池(添付資料写真6):約770万㎥の貯水が可能であり、乾季の間、同貯水池の水を工業用に使用することが可能だ。雨季で貯水池は再び満杯となる他、上流に貯水用の小型ダム(2.7百万㎥)を建設する計画もある。ダウェーSEZにおける水不足の心配は少ないと言えよう。
  7. 移転先住宅地域(添付資料写真7):ダウェーSEZ建設予定地には、2万人に及ぶ住民が住んでおり、彼らの移転先の一つとして建設されている。イタルタイ社が管理運営し、480世帯分の住宅が準備されているものの、移転は進んでいない。
  8. 採石場(添付資料写真8):この採石場で採掘された岩石はこの場所で砕石され、コンクリートに混ぜるなどして、SEZ建設に使用される。

日本の官民への高い期待

今回、ダウェーSEZ視察ミッション団は、ダウェーSEZを管轄する現地政府として、「ダウェー経済特別区管理委員会」と「タニンダーリ管区政府」を表敬訪問した。

ダウェー経済特別区管理委員会の担当者は、「タイとミャンマー間のアクセス道路の整備を優先的に実施する必要がある」と述べた他、「イニシャルフェーズと並行して、フルフェーズ(総合的な開発計画)の開発も並行して実施していきたい」と開発への意気込みを述べた。他方、「外国人が関心を持っているのは、ラカイン州の問題(ロヒンギャ問題)ばかりであるため、ぜひミャンマーの経済の面にも注目してほしい」という要望もあった。

こうしたコメントに対し、日本側の参加者も「ダウェーSEZ開発全体のスケジュールを示してほしい」、また「タイとミャンマーとの間の道路の舗装化を早期に実施してほしい」という要望を伝えた。

他方、タニンダーリ管区政府への表敬訪問においても、管区政府からは「タニンダーリ州の経済発展につながるSEZ開発には期待している。是非、日本政府や日系企業も協力してほしい」といった発言があった。

また、日本企業が懸念する周辺道路の整備について、管区政府は「タイ・ミャンマー国境からSEZに向かう道路整備は、タイと協力して着実に進めている。周辺住民への賠償金の支払い等も開始している」と、工事の進捗ぶりをアピールした。

開発計画の見える化、現地政府のコミットメントが重要

ミッション参加者からは、やはりタイとダウェーSEZをつなぐアクセス道路建設や、個別プロジェクトの詳細な開発プランが見えない点について懸念する声が多く挙がった。また、将来のダウェーSEZ開発計画全体の青写真を要望する声も多かった。

ダウェーSEZ開発計画は規模が大きく、民間企業だけで完成させることは難しい。同SEZ開発の開発と企業誘致のためには、ミャンマーおよびタイ政府による、さらなるコミットメントが重要であると考えられる。

(注)ラグーンとは、湾が砂州によって外海から隔てられ湖沼化した地形のこと

(阿部桂三、渡邉健治)

(タイ)

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