英中銀、政策金利を据え置き

(英国)

ロンドン発

2018年02月21日

イングランド銀行(中央銀行)は2月8日の金融政策委員会(MPC)で、政策金利の据え置きを決定した。また、世界経済の好調に牽引されるとして、2018年と2019年の英国の実質GDP成長率の見通しをともに1.8%と、2017年11月時点での予測からそれぞれ0.2ポイント、0.1ポイント引き上げた。しかし、直近の2018年1月の新車登録台数は前年同月比6.3%減と苦境が続いていることなどから、産業界からは中銀の見通しは楽観的過ぎるとの批判の声も出ている。

世界経済が英国の成長を牽引

中銀は2月8日のMPCで政策金利の据え置きを全会一致で決定した。2017年後半にかけ、インフレ率は中銀がターゲットとする2%を上回る3%台に達していたことから、11月には政策金利を引き上げていた(2017年11月21日記事参照)。また、英国の実質GDP成長率の見通しについては、世界経済の好調に牽引されるとして、2018年と2019年ともに1.8%と、2017年11月の予測からそれぞれ0.2ポイント、0.1ポイント引き上げた。

マーク・カーニー総裁は同日行った記者会見で、「世界経済は過去7年間で最も速いスピードで成長している」として、堅調な世界需要とポンド安の恩恵を受け、貿易が英国経済の成長を牽引していると述べた。英国のEU離脱(ブレグジット)に伴う不確実性の高まりが、企業投資を引き続き抑制しているものの、世界経済の成長が企業の投資を後押しし、全体として相殺され安定的な状況と分析。一方、消費については物価率上昇に伴い家計消費支出の伸びが国民投票以降半減していることから、今後3年間はこの状況が続くとの見通しを示した。

インフレ率については、2017年11月に3.1%に達したが、同月の利上げを受けて12月には3.0%へとやや減速、2018年1月も3.0%となっている。カーニー総裁は、中銀の予測よりもインフレ抑制が進まないのは原油価格の上昇が主要因とし、短期的には再び現在の水準を上回る可能性もあるとしている。カーニー総裁およびMPCは、将来の金融引き締めは段階的・限定的に実施していくとしているが、こうした状況から当初予定よりもやや早めに、かつ大規模に行いたいとの考えを示した。

産業界には中銀の見通しは楽観的過ぎるとの声も

今回の中銀の経済見通し引き上げについて、英国商工会議所(BCC)は同日のプレスリリースで、「われわれは、短期的な英国経済は中銀の予測より厳しい状況とみている」と批判的な考えを示した。BCCは「貿易の伸びのGDP成長率への寄与は中銀が考えるより限定的で、好調な世界経済により輸出が堅調に伸びても、輸入も加速している」と分析。輸入品の価格は上昇しているものの、企業や消費者による輸入品から国産品への切り替えが起こっているとする中銀の見方に対して、「ほとんど根拠がない」と述べている。

英国自動車製造販売者協会(SMMT)が2月5日に発表した統計によると、1月の新車(乗用車)登録台数は前年同月比6.3%減となり、事業用(29.7%減、注1)、フリート(1.8%減、注2)、個人用(9.5%減)ともに減少した。ガソリン車および代替燃料車はそれぞれ8.5%増、23.9%増と好調だったが、ディーゼル車は25.6%減と大幅に減少した。政府はディーゼル車を廃止する政策を打ち出しているが、SMMTは、英国で生産される自動車の5台に2台以上がディーゼル車であり、その経済に与える影響は非常に大きいと分析している。

(注1)ばら売りで、企業が直接購入しビジネスに使う車両。

(注2)自動車会社自身またはリース会社に何十台かまとめて販売されて、企業にリースされる車両。

(佐藤丈治)

(英国)

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