改正標準化法が施行-ポイントを弁護士に聞く-

(中国)

北京発

2018年01月16日

改正「標準化法」が1月1日に施行された。改正は1989年の標準化法の施行以来初めて。標準の制定対象が、従来の工業製品、工事建築、環境保護に関する各種技術から、農業、サービス業、社会事業領域に拡大されるなど、産業の発展に対応する内容となった。改正法のポイントについて、北京市高朋法律事務所の談亜軍弁護士に聞いた(2017年12月14日)。

旧法は中国社会の変化に適応できず

(問)改正の背景は。

(答)1989年に施行された標準化法(以下「旧法」)は、経済のグローバル化と市場経済の急速な発展による中国社会の変化に適応できず、次のような問題が顕在化していた。

(1)標準の対象が狭い。旧法は工業領域に重点が置かれている。農業やサービス業などの領域における標準制定のニーズに対応できていない。

(2)強制標準を制定する主体が分散し、対象が広く、内容に重複や矛盾がある。現行の国家標準、業界標準、地方標準の3つの等級の標準において、名称が同じものは2,000近くに上り、異なる部門や組織がそれぞれ制定した技術指標に重複が多く、不一致や矛盾が生じている。

(3)政府主導で制定された標準が多く、標準体系に合理性が欠けている。旧法における国家標準、業界標準、地方標準は全て政府主導で制定され、学会、業界団体などの社会団体による自主的な標準制定に対する制限が厳しく、標準が不十分だ。

(4)標準化の推進体系が十分ではない。一部の標準が多くの部門に及ぶ一方、各部門の立場が異なり、判断を統一することが難しい。このため、一部の標準の実施効果は期待どおりにならず、効率的な管理を妨げ、監督管理にもマイナスだ。

企業標準の届け出制度を廃止

(問)主な改正点は何か。

(答)次の6点だ(表参照)。

(1)標準の対象を拡大した。旧法は工業製品、工事建設および環境保護領域に限られていた。新法では標準(標準サンプルを含む)を、農業、工業、サービス業および社会事業などの領域で統一すべき技術規格と定義している。これにより、今後、農業、サービス業および社会事業などの領域においても各種の標準(強制標準、推奨標準を含む)が制定される見込みだ。

(2)強制標準の対象を縮小した。新法では強制国家標準のみを残し、強制業界標準と強制地方標準を廃止した。また、強制標準の対象を「人身の健康および生命、財産の安全、国の安全、生態環境の安全ならびに経済・社会の管理の基本的な需要を満たす技術要件」に限定した。新法施行後は国務院とその授権機関のみが、限定された範囲内で強制標準を公布することができる。その他のいかなる機関(中央政府機関、地方政府機関を含む)であっても推奨標準(推奨業界標準、推奨地方標準を含む)しか公布することができない。

(3)団体標準に法的地位を与えた。新法は、学会、協会、商会、連合会、産業技術連盟などの社会団体が関連の市場主体と協力し、市場およびイノベーションに必要な団体標準を共同で制定することができるとしている。その団体の構成員が取り決めにより採用し、またはその団体の規定に従い、任意で採用できる標準として社会に提供することを推奨している。これにより、新法施行後、団体標準は国家標準、業界標準、地方標準と同様に法的効力を有する。

(4)企業標準の届け出制度を廃止し、自発的な公開および監督制度を適用する。企業は、自社が対象となる強制標準、推奨標準、団体標準または企業標準の番号と名称を公開しなければならない。企業は自ら制定した企業標準については、その製品、サービスの機能指標と製品の性能指標を公開しなければならない。また、団体標準、企業標準は標準情報公共サービスプラットフォーム外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを通じて公開することが推奨されている。

(5)標準制定のプロセスの透明性を高めた。新法では標準の制定に当たり、さまざまな方式を用いて意見を募集しなければならず、強制標準の文書は無償で社会に公開しなければならないとしている。推奨標準についても、無償で文書を公開することを促進するとしている。

(6)国際標準の制定への関与が追加された。旧法での「国際標準を積極的に採用するよう奨励する」という表現から、新法では「国際標準化活動への関与を積極的に促し、標準化に関する対外協力および交流を実施し、国際標準の制定に関与し、国情を加味して国際標準を取り入れ、中国の国内標準と国外の標準の間での転換、活用を推進する」となった。

表 「標準化法」改正前後での比較

整理される標準の動向に注意が必要

(問)日系企業にはどういった影響があるか。

(答)新法では標準の対象が拡大された。養殖業、飲食業、補修業、コンサルティングサービス業、流通業、保険業など農業、サービス業、社会事業領域に属する企業は国家標準、業界標準などの制定動向に関心を持つべきだろう。関連標準が公布された場合、強制標準は順守しなければならず、その他の標準についても、企業が採用した場合はこれを順守しなければならない。

強制業界標準と強制地方標準は新法により廃止される。これにより、強制業界標準と強制地方標準は、強制国家標準に転換されるものと廃止されるものに分かれる可能性がある。標準の今後の整理動向に関心を持ち、自社が対象となる標準が変更される場合には、迅速に対応措置(生産技術規格の調整、ラベル表示内容の調整など)を講じるべきだろう。

新法施行後、企業は自社が対象となる強制標準、推奨標準、団体標準または企業標準の番号と名称を公開しなければならない。また、自ら制定した企業標準については、さらに製品、サービスの機能指標と製品の性能指標を公開する必要がある。企業は紛争時や調査を受けたときに立証できるよう、自社が対象となる標準を自社のウェブサイトなどで自主的に公開するとともに、標準情報公共サービスプラットフォームを通じて公開することを検討すべきだろう。

新法は、企業が積極的に各種標準の制定過程に参加することを奨励している。国家標準化委員会などは11月13日、「外商投資企業の中国標準化業務への参与に係る指導意見PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」の通知を公布し、標準化業務において外商投資企業が国内資本企業と同等の待遇を享受することが規定された。日系企業も各種標準の制定過程に積極的に参加することで、各種標準を企業の実情にあったものにしていくことに努力することができるだろう。

(日向裕弥)

(中国)

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