AI展示エリアを初めて設置、戦略育成の姿勢示す-第19回中国国際工業博覧会(1)-

(中国)

上海発

2017年12月08日

11月7~11日、上海市で中国最大級の工業総合見本市「第19回中国国際工業博覧会」が開催された。人工知能(AI)の展示エリアを初めて設け、国を挙げて育成する姿勢を示した。パートナーカントリーを務めたのは、中国との貿易・投資が急拡大している英国だった。博覧会の模様を2回に分けて紹介する。

27カ国・地域から2,562社・団体が出展

「第19回中国国際工業博覧会」(以下、工博会)は11月7~11日にかけて、上海虹橋商務区にある国家会展センターで開かれた。取扱品目は航空宇宙技術(CAATS)が加わって10品目となった(表参照)。出展したのは初参加のハンガリーを含めて27カ国・地域の2,562社・団体で、前回(2,556社)を上回った。また、展示面積は過去最大の約28万平方メートル、来場者は前回比6.7%増の16万人だった。

表 「第19回中国国際工業博覧会」の概要
取扱品目(略称) 展示ホール 主な出展企業
CNC工作機械・金属加工(MWCS) 2H、3H、NH アマダ、ヤマザキマザック、村田機械、上海機床、秦川機床
工業オートメーション(IAS) 5.1H、6.1H オムロン、三菱電機、ミスミ、シーメンス、ボッシュ
省エネ・環境保護技術および設備(EPTES) 4.1H 国家電網、JFEスチール
情報・通信技術の応用(ICTS) 5.2H 中国電信、華為技術、インテル、中国航天科技
新エネルギー・電力電工(ES) 4.1H 上海電気、申能集団、フランス・シュナイダーエレクトリック
新エネ車・コネクテッドカー(NEAS) 1H 上海汽車、BMW、英国(パートナーカントリー)
産業ロボット(RS) 7.1H、8.1H ファナック、スイス・ABB、安川電機、ドイツ・KUKA、新松機器人
科学・技術革新(STIS) 6.2H、1H 同済大学、上海交通大学、中国科学院
航空宇宙技術(CAATS) 4.2H 中国航空工業
新材料(NMIS) 4.2H ドイツ・BASF、上海建材

(出所)「第19回中国国際工業博覧会」のガイドブック

工博会は先端技術および設備の展示・商談を中心とする国際見本市として、1999年から上海で毎年開催されている。2018年の第20回工博会は9月19~23日に同じく国家会展センターで開かれる予定だ。

今回のパートナーカントリーを務めた英国政府は、1,200平方メートルのパビリオンを出展し、120人余りの代表団を派遣した。加えて、開催に合わせて実施されたビジネスミッションにも参加した。次世代製造業戦略を「中国製造2025」戦略と連携させることでビジネスチャンスを探り出そうとしている。

ジェトロでは、省エネ・環境保護技術および設備展(EPTES)に10年連続でジャパンパビリオンを設け、13社・団体が出展した。また、土壌汚染・地下水修復をテーマとする専門家交流会も開催した。

外資企業は、展示面積を拡大するところがある一方、メリットが少ないとして出展を見合わせる企業も増えている。工博会の発表によると、外資企業の出展ブース数(9平方メートル換算個数)は前年の3,536から4,003に増えたが、出展企業は2015年の665社をピークに減少している。今回参加した外資企業数はまだ発表されていないが、初めて設けられた航空宇宙技術やAIエリアの出展企業のほとんどは中国だったこともあり、前回より減少したとみられる。

国務院がAI産業の育成計画を発表

AI産業は国を挙げて取り組むプロジェクトとして、展示エリアが初めて設置された。

国務院は7月20日、AI産業の育成を図る「次世代人工知能発展計画」を発表し、2030年までには理論や技術、応用などで世界をリードし、AIのコア分野の産業規模を2020年の1,500億元(約2兆5,500億円、1元=約17円)から1兆元、関連産業規模を1兆元から10兆元に引き上げることを目指している。AIは言語処理や無人運転、ロボット、深層学習、顔認証、コネクテッドカーなどで広く応用され、戦略産業として期待されている。

ちなみに、米マサチューセッツ工科大学(MIT)刊行の専門誌が6月に発表した「世界で最も賢い会社トップ50社」には、中国から9社が選ばれた。6位の科大訊飛、11位の昿視科技はそれぞれAIを駆使した音声認識技術、顔認証技術で世界の先頭を走る新興企業だ。また、ランクインしたアリババ集団や検索エンジンの百度、騰訊(テンセント)、商業ドローン業界最大手DJIなどもさまざまなかたちでAIを活用しようとしている。

(劉元森)

(中国)

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