たくあんの缶詰を欧州などに輸出-漬物を海外に広める道本食品-
(EU、日本)
欧州ロシアCIS課
2017年12月08日
道本食品(宮崎県宮崎市)は宮崎県産の干し大根を原料としたたくあんなどの商品を、欧州や北米はじめ世界各国へ輸出している。海外向けに、たくあんの缶詰といった独自商品や無添加のたくあんを開発したほか、包装に英語表示も取り入れている。海外営業担当の道本理一郎氏に、海外事業の現状と今後の商品展開について聞いた(10月20日)。
英国での試食販売が欧州輸出のきっかけに
1937年に創業した道本食品は、1966年から漬物製造に着手し、50年以上にわたり、天日干しした宮崎県産の大根を原料としたたくあんや漬物の製造・販売を行ってきた。最近では、たくあんの缶詰や粒マスタード風味のたくあんなど、海外の消費者にも向く製品を開発している。海外輸出のきっかけは、1990年代後半に仲介業者経由で米国へ輸出を開始したことだという。その後、2000年代に入ると、香港、台湾、シンガポールなどアジア各国・地域の展示会の宮崎県ブースで試食販売を行い、バイヤーとの交流を深めてきた。現在ではカナダ、オーストラリア、中東や欧州向けにも商品を輸出する。
欧州に輸出するきっかけとなったのは、2014年に英国の日系スーパーで開催された九州物産展で試食販売を行ったことだという。道本氏は「お店の方も驚くほど、現地の外国人から好感触を得た」と語る。2015年には英国で販売を開始し、イタリアのミラノ万博やドイツのケルンで行われた見本市「アヌーガ2015」に出展した。2016年にはフランス・パリの食品見本市「SIAL2016」に出展するなど、宮崎県の補助事業を活用して現地での商談会などに参加しており、現在、欧州向け輸出はドイツ、フランスなど9カ国に及んでいる。
海外での売上高は全体の約2%で、販売量も徐々に伸びている。売り上げの多いのは、北米、アジアと続き、欧州は海外売上高の約10%だという。
しょうゆや唐辛子など缶詰は5種類の味
欧州などで好感触を得たのが、同社が独自に開発したたくあんの缶詰だ。保存食向けに開発したため、保存期間は3年と長い。日本から輸送に時間のかかる欧州の小売店からは、保存期間が長いことが喜ばれるという。また、気軽に開けてすぐ食べられ、味も変わらないという特性から、単身者や海外への土産にも向いているという。さらに、缶詰には栄養素であるギャバ(GABA、γ-アミノ酪酸)を閉じ込める効果もあるようで、栄養面でも魅力ある商品となっている。
たくあんの缶詰には5種類の味がある。一般的に欧州では漬物のにおいが敬遠されるイメージがあるが、道本食品では通常のたくあんの味に加え、しょうゆ味や唐辛子味といった商品も用意して対応している。欧州でもすしを食べる人は多く、しょうゆ味は現地の外国人にもなじみやすい。また、唐辛子味も現地では好まれるという。道本氏は「例えばサラダに合う商品など、現地の味覚にマッチした商品提案は必要だ」と、新たな商品開発に意欲的だ。輸出は、仲介業者を経由しているが、7月に大筋合意した日EU経済連携協定(EPA)により、日本から欧州へ輸出する漬物の関税17.6%が撤廃された場合の効果は大きいという。
世界各国の市場をみると、米国は日本食が普及していることもあり、漬物市場も飽和状態となっている。また、アジアでは競合が多く、海外業者も含め価格競争になってしまうことから、販路拡大に苦労することもあるという。その点、欧州は所得が高めで、品質が認められれば販売拡大の可能性がある点で魅力だという。
無添加や包装にも工夫
輸出に際しては、原材料や包装にも工夫する。特に米国や欧州では、食品添加物を含むかどうか厳しくチェックされることから、グルタミン酸ナトリウム(MSG)を含まない無添加のたくあんを開発した。欧州は規制が厳しい半面、一度受け入れられれば輸出が楽になるという。また、中東向け商品は原材料からアルコールを除くなどの工夫をしている。包装の表記も海外の消費者が読みやすいよう英語にしている。
欧州向けには、ワインに合う粒マスタードたくあんも開発した。通常のたくあんよりコストがかかるが、好評を得ている。さらに、無添加のたくあん缶詰の開発にも着手しているという。同社の商品は、輸出先のレストランで提供される機会があるほか、チーズに合う食べ方やブラックペッパーをかけるなど、他の商品とのコラボレーションにも可能性があるという。
道本氏は「現地での試食会などで、商品がどのようなものか理解してもらうことが重要だと感じている」と語り、同社では商品開発や現地での売り込みを進め、5年以内には海外向けの売り上げを2倍以上にするとしている。
(田中晋、木下裕之)
(EU、日本)
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