投資環境や治安の安定を強調-トルコ投資セミナーを都内で共催-

(トルコ、日本)

中東アフリカ課

2017年10月27日

ジェトロは10月23日に東京都内で、トルコ首相府投資促進機関(ISPAT)と共催で「トルコ投資セミナー:安全対策と投資環境の安定性」を開いた。日本企業、両国政府機関の関係者ら約120人が参加、専門家らがトルコ政府の実施している安全対策の内容や投資環境の安定性について紹介した。

外国投資誘致に向け改革を遂行

本セミナーは、トルコ首相府投資促進機関(ISPAT)のアフメット・ブラク・ダールオール副総裁の来日を機にジェトロとISPATが共催した。トルコは経済成長が続き、人口約8,000万人の大国として日本企業の関心も高まっているが、2015年以降のテロやクーデター未遂事件の発生により、治安情勢や投資環境が注視されている。

ダールオール氏は「トルコの投資環境の安定性」と題して講演し、「2016年はトルコを取り巻く情勢は厳しいものがあったが、政権は困難を乗り越え着実に前進するための決断を果たし、経済や投資環境の安定性を保っている」と強調した。経済面では、「世界13位のGDP規模(購買力平価)を誇り、2017年上半期のGDP成長率は5.1%と高い水準を維持している」とし、外国投資誘致に向けた具体的な政策として「外国企業に対して2003年から一貫して内国民待遇を適用し、最低資本要件の撤廃、不動産取得の権利付与、配当金・その他金融資産の無税での送金などが可能だ」と紹介した。また、「トルコは地理的優位性を有し、空路4時間以内で16億人、GDP規模28兆ドルの市場へのアクセスが可能だ」と、日本企業にさらなる投資を呼び掛けた。

写真 講演するISPATのダールオール副総裁(ジェトロ撮影)

続いてISPATシニアアドバイザーの青木雄一氏が、「トルコ政府による安全対策」を紹介した。「トルコの治安組織には、内務省とその傘下にある警察総局(人員27万3,000人)、共和国憲兵隊、沿岸警備司令部のほか、大統領府と国家情報組織がある」とし、加えて「約30年前に導入された民間警備産業はこの10年間で著しい発展を遂げ、民間警備会社は1,330社、民間警備に携わる人は23万3,457人に上る」と説明した。テロ発生によるビジネス環境への影響については、「外国企業約5万3,000社が進出しているが、その大半を占める欧州企業の進出は増加傾向にあり、テロの影響はみられない」と分析した。一般的な治安も良好で、対策については「治安組織が徹底した国境管理、空港の警備強化のほか、地下鉄の駅や公共施設にX線装置を導入するなどして安全確保に努めている」と現地事情を伝えた。

IS掃討後の情勢と対欧米関係を注視

ジェトロ・アジア経済研究所の間寧(はざま・やすし)地域研究センター・中東研究グループ長は「クルド自治政府住民投票後のトルコ情勢」と題して現地の最新動向を解説した。2017年に入ってからの動向では、「IS掃討後をめぐる抗争」と「欧米とトルコの対立の深化」を注視すべきだと喚起した。前者については、「シリア北部のクルド民族主義政党・民主統一党(PYD)やトルコのクルド分離主義組織・クルディスタン労働者党(PKK)系組織であるシリアの人民防衛隊(YPG)が支配を拡大させていることが、トルコの安全保障上の大きな懸念」との見解を示した。後者については、「欧米によるPKKや(トルコ政府がクーデター未遂の首謀者とみる)在米イスラム指導者ギュレン氏の保護が対立軸になり、外交関係のトゲになっている」と述べ、さらに4月の(大統領権限強化を目指す憲法改正の是非が問われた)国民投票に対するEUからの批判、10月の米国とトルコの相互査証発給業務の停止にみられるように、対立は深化している状況だと解説した。

閉会あいさつでジェトロの水井修理事は、「トルコ進出日系企業は200社を超え、食品分野やエネルギー、病院事業などで活躍がみられる。ジェトロはカウンターパートであるISPATとの連携を強化し、両国間のビジネス関係を強化・推進していく」と締めくくった。

 写真 約120人が参加したセミナーの会場(ジェトロ撮影)

(高崎早和香)

(トルコ、日本)

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