大統領選は10月17日に再選挙へ-最高裁が野党連合の異議申し立て認める-

(ケニア)

ナイロビ発

2017年09月05日

最高裁判所は9月1日、大統領選挙で敗北した野党連合(NASA)による選挙結果無効の異議申し立てについて、選挙は憲法にのっとった手続きで行われておらず結果は無効だとの判断を下し、60日以内に再選挙を実施するよう命じた。これを受け、選挙管理委員会(IEBC)は再選挙の日程を10月17日と発表した。

大統領は最高裁の判断を「尊重」

9月1日、最高裁はNASAによる異議申し立てを審査した結果、大統領選挙の開票は憲法にのっとった手続きがなされておらず無効だとして、NASAの主張を全面的に認める判決を下し、60日以内に再選挙を実施するよう命じた。再選が無効とされたケニヤッタ大統領は「審査結果には同意できないが、最高裁の判断を尊重する」とコメントした。

大統領選は8月8日に投票が行われ、11日にIEBCが現職で与党候補のケニヤッタ氏が820万3,290票(得票率54.27%)を獲得し、676万2,224票(得票率44.74%)だったNASA候補のオディンガ氏を破って当選したと発表していた。

IEBCによると、5,000人以上の国際選挙監視団および数百人の国際ジャーナリストがケニア入りした。選挙監視団などは約40万票の無効票が確認されたことに懸念を表明したものの、投票過程や全体的な完全性(Integrity)には影響を与えないとし、投票は平和的・組織的に実施されたとして、開票結果を全面的に支持すると発表していた。

NASAは開票速報の段階から、IEBCの集計システムが何者かにハッキングされたほか、幾つかの存在しない投票所からの集計を投票数にカウントするなど不正操作が行われていたと主張し、8月18日に正式に最高裁に異議申し立てを行った(2017年8月22日記事参照)。

株価下落、景気回復は遅れる見通し

最高裁の判断を受け、9月1日のナイロビ証券取引所の株価総額は約3.7%〔約9,200億ケニア・シリング(約1兆120億円、Ksh、1Ksh=約1.1円)〕下落した。主要銘柄で構成されるNSE-20指数も3.5%(140ポイント)下落している。

ケニア経済は2015年をピークに2016年、2017年前半にかけて緩やかに下降している。8月の大統領選挙は政権交代の可能性があったため、国内外の投資家はその動向を見極めるために投資を手控える傾向にあった。選挙後には投資活動が活発になることが期待されていたが、再選挙が行われることになり、投資の判断時期がさらに遅れることも想定され、少なくとも年内の景気回復は難しくなったとみられている。

最高裁の判断に対するケニヤッタ大統領のコメントには、与野党の対立を抑制する狙いがあったとみられる。在ケニア日本大使館の治安情報でも、西部地域や海岸地域の一部で与野党の衝突があったものの、首都ナイロビをはじめ暴動などの発生情報はないとしているが、今後再選挙に向け与野党のキャンペーンが全土で再開されることから、引き続き注意が必要だ。

(直江敦彦)

(ケニア)

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