インダストリー4.0での協力にも意欲-ソボトカ首相の日本公式訪問(2)-

(チェコ、日本)

欧州ロシアCIS課

2017年07月21日

ジェトロは6月28日、チェコ投資・ビジネス開発庁(チェコインベスト)、在日チェコ大使館、チェコ商工会議所と、来日したボフスラフ・ソボトカ首相を迎え、東京で「チェコ・日本ビジネス投資フォーラム」を開催した。チェコの経済概況や投資環境などの解説に加え、パネルディスカッションでは「インダストリー4.0」への国内対応、労働者不足への対応策など多岐にわたるトピックについて議論が交わされた。連載の後編。

質は高いも労働者の不足が課題に

ソボトカ首相はフォーラムの基調講演で、「日本はチェコにとって、ドイツに次ぐ第2の投資国であり、チェコの対日輸出は過去6年間に倍増した。アジア地域ではチェコにとって第3の貿易相手国だ」と述べ、日本とチェコの経済関係の深さを強調した。さらに、「eモビリティーなど自動車産業における変革や、インダストリー4.0で注目されている工場の自動化の両国間の協力は大きな可能性がある」とした上で、「両国の経済協力をさらに発展させるためには、日EU経済連携協定(EPA)の早期妥結が重要で、経済活動主体全てに大きく貢献するだろう」と述べ、日EU・EPAの早期妥結に期待感を示した(7月6日に日本とEUが大枠合意に達したと発表)。

チェコ商工会議所のボジボイ・ミナージュ副会頭は冒頭のあいさつで、両国間の経済協力関係は長い伝統があるがまだ大きな可能性を秘めており、今後もその協力関係を深化させることができるとして、既存産業だけでなく、ツーリズムやスパ・ヘルスケア関連産業も成長してきており、チャンスがあると述べた。

また、チェコインベストの長官アドバイザーを務める中越誠治氏は、チェコの政治経済状況、地理的優位性、外国企業の進出傾向について解説し、地理的優位性や西欧より安価な労働力といった魅力だけでなく、チェコは中欧諸国で工業国としての定評もあり、労働者の質は高いと述べた。一方、最近の課題として、失業率の低さに伴う労働力不足を挙げ、政府の対応策として、ウクライナからの労働者に対するビザ発行手続きの緩和などが実施されているとした。そして、オストラバなどチェコ東部は比較的余剰労働力があり、労働力が確保しやすいこと、外国企業の投資は自動車、機械、材料関連が多く、日本企業の進出も自動車関連が中心になっていると説明した。

続いてジェトロ・プラハ事務所の村上義所長が経済情勢およびビジネスの新しいトレンドについて解説。失業率の低下による労働者不足問題に触れつつ、外国投資は順調に増えており、日系・非日系を問わず自動車関連への投資拡大が特に顕著だとし、電気自動車(EV)への対応など自動車産業における新しいトレンドや変革が企業投資に影響を与えていると話した。

製造業の高付加価値化狙う外国投資

パネルディスカッションでは、パネリストにミナージュ副会頭、チェコインベストのカレル・クチェラ長官、チェコで日系企業向けに弁護士業に携わるデントンズ法律事務所の川井拓良弁護士を迎え、インダストリー4.0への政府・企業の取り組み、最近の外国投資のトレンド、労働者不足への対応策などについて議論が交わされた。

外国投資のトレンドとして、クチェラ長官は研究開発能力の向上、製造業・サプライチェーンの高付加価値化を挙げ、一例としてドイツ・シーメンスのチェコへの大規模な再投資計画を示した。また、労働力不足問題は欧州全土で起きているとし、政府の対応策として、ウクライナなど文化的に近い隣国の労働ビザ緩和などを実施していると述べた。一方、米国企業は労働市場も競争の世界と考え、優秀な人材確保のために報酬を引き上げており、労働者不足を気にしていないとも指摘した。インダストリー4.0についてミナージュ副会頭は、「企業はそれぞれの分野で研究開発に投資してきており、新しい名称が付けられたというだけ。ただ、企業の資金調達は課題であり、政府の補助金などが必要」と述べた。クチェラ長官は「政府はインダストリー4.0に関連する政策を打ち出しており、ナノテクノロジーなど新産業分野に補助金も拠出している。また、インダストリー4.0に不可欠な高速インターネットのインフラ拡充に向けた投資も積極的に行っている」と述べた。

(廣田純子)

(チェコ、日本)

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