共和・民主両党が妥協し、2017年度予算に合意

(米国)

米州課

2017年05月22日

 米国上院議会は5月4日、2017年9月までの2017年度予算案を賛成多数で承認した。4月28日までの暫定予算の失効に伴い、共和・民主両党間の調整が進められてきた。総額1兆1,000億ドルの予算では、トランプ政権が望んだ国防予算の増額が一部認められる一方、注目されたメキシコ国境の壁建設費用は盛り込まれなかった。環境保護庁(EPA)や国立衛生研究所(NIH)の予算削減も見送られるなど、共和党の譲歩が目立ち、反対数の割合では上下院とも共和党議員の方が上回った。

短期暫定予算を挟み共和党がより譲歩

連邦議会は4月28日までの暫定予算の失効に合わせて1週間の短期暫定予算を成立させた後、共和・民主両党間で調整が続けられてきた。その結果、4月30日の両党間の合意後、5月3日に下院を賛成309票(反対118票)、翌4日に上院を賛成79票(反対18票)で通過し、5日に大統領が署名外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした(表参照)。党派別に票数をみると、野党・民主党議員の大多数が上下院とも賛成したのに対して、与党・共和党議員では上院で3割強、下院で4割強の反対者が出た。今回の予算の決着は、予算不成立による政府閉鎖を避けたい共和・民主両党の妥協によるものだが、政府閉鎖の打撃が大きい政権与党の共和党がより譲歩したことが投票結果に影響したとの見方が多い。

上下院での採決結果(単位:票)
政党 項目 上院 下院
共和党 賛成 32 131
反対 18 103
棄権 2 4
民主党 賛成 47 178
反対 0 15
棄権 1 0
合計 賛成 79 309
反対 18 118
棄権 3 4

(注)下院は4議席が空席。
(出所)連邦議会ウェブサイト

メキシコ国境沿いの壁建設費用の計上は断念

成立した予算は、「オムニバス法案」と呼ばれる12本の歳出法案を束ねたもの。ホワイトハウスが3月16日に発表した2017年度予算案では、非国防費を180億ドル削減する一方、国防費とメキシコ国境沿いの壁建設費用がそれぞれ5,760億ドル(250億ドル増)、26億ドル(全増)が盛り込まれ、暫定予算に比べて全体で100億ドルが上乗せされていた(2017年4月6日記事参照)。

今回認められた予算PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)では、予算額は予算管理法の制限に収まる1兆1,000億ドルで据え置かれ、国防費については、海外での軍事活動費用(935億ドル)が別途計上された。注目されたメキシコ国境沿いの壁建設費用の計上は見送られた。そのほか、民主党の要求していた先端医療研究機関である国立衛生研究所(NIH)予算の増額(20億ドル)、環境保護庁(EPA)予算の削減見送り、家族計画連盟への補助金継続などが含まれた。共和党が望んだ国防費の増額は金額こそ要求額に満たなかったが、150億ドルの総額を実現したことで、党内で一定の支持を得たもようだ。国家安全保障省が管轄する国境における治安と移民の対応に係る予算でも、要求額(30億ドル)には満たないものの、15億ドルの増額が認められた。

通商関連の予算も増額に

このほか、通商関係では通商代表部(USTR)の予算が750万ドル増の6,200万ドルに増額された(通商専門誌「インサイドUSトレード」5月11日)。貿易執行信託基金(Trade Enforcement Trust Fund、注)が一部利用される見通しだ。国際貿易委員会(ITC)の予算も300万ドル増の9,150万ドルとなった。このほか商務省では、中国向けアンチダンピング税、相殺関税に係る費用についても前年と同様、1,640万ドル計上された。

予算内容について、上院のコクラン歳出委員長(共和党、ミシシッピ州選出)は「治安、国境の安全、さらには薬物問題への取り組みや医療研究など他の優先分野の強化策の重要性とともに、114億ドル以上の規模の歳出を見直し、一部事業の終了や統合などを進めた」(上院歳出委員会ウェブサイト)ことを強調した。

2017年10月以降の2018年度予算案の内容ついては、5月22日の週に発表が予定されている。今回と同様に両党間で妥協が図れるか、その場合、両党の意向がいかに反映されるかに関心が集まる。

(注)2015年貿易円滑化・貿易執行法によって導入された基金。

(秋山士郎)

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