最低賃金を18.0%引き上げ、2年ぶりの改定に

(ケニア)

ナイロビ発

2017年05月22日

 ケニヤッタ大統領は5月1日、法定最低賃金を前年比で18.0%引き上げると発表した。引き上げは2年ぶりで、引き上げ幅はケニヤッタ政権の発足後、最大となった。

引き上げ幅は現政権発足後で最大

ケニヤッタ大統領は5月1日、首都ナイロビ市内で開催されたメーデーの集会で、法定最低賃金を18.0%引き上げると発表した。また併せて、賞与と残業代の非課税枠を年額10万ケニア・シリング(約11万円、Ksh、1Ksh=約1.1円)まで引き上げるとした。いずれも法律が改正され、公示が発表された後に有効となる。大統領は、前年に最低賃金の引き上げを見送ったことや物価上昇率を勘案して、今回の賃金引き上げを判断した、と述べた。ケニア国家統計局によると、ケニアの2015年と2016年のインフレ率はそれぞれ6.6%、6.3%で推移している。最低賃金の18.0%引き上げは、過去2年分の物価上昇率を上回る増加幅となり、労働者にとっては朗報だ(表1参照)。

表1 2009年以降の法定最低賃金引き上げ率と物価上昇率(単位:%)
賃金引き上げ率 物価上昇率
2009年 18.0~20.0 10.5
2010年 10.0 4.1
2011年 12.5 14.0
2012年 13.1 9.4
2013年 14.0 5.7
2014年 0.0 6.9
2015年 12.0 6.6
2016年 0.0 6.3
2017年 18.0 9.0

(注)物価上昇率の2016年は暫定値、2017年は予測値。
(出所)ケニア国家統計局「エコノミック・サーベイ2017」

ケニアの法定最低賃金は、税引き前の月額基本給(残業代、諸手当は含まず)が基準となる。また、農業分野とその他の分野に大別され、さらに農業分野は10職種、その他の分野は12職種(職工はさらに4段階に分類)・3地域分類ごとに定められている(表2参照)。今回の賃上げによって、例えばナイロビ市内では、法定最低賃金が最も低い清掃作業員などの一般労働者では、これまでの月額1万955Kshから1万2,927Kshになる(表2参照)。最も賃金が高い大型車のドライバーなどは、2万4,720Kshから2万9,170Kshになる。

表2 2017年のケニア主要都市別職業別最低賃金(単位:Ksh)
職業 ナイロビ、モンバサ、
キスム
ナイロビ近郊
地方都市
他都市
一般労働者 12,927 11,926 6,896
ウエーター、コック、鉱山労働者 13,961 12,386 7,969
警備員 14,421 13,369 8,225
工作機械オペレーター 16,725 15,646 12,792
デザイナー 19,909 18,202 15,521
テーラー、ドライバー(中型) 21,942 20,167 17,982
営業マン、トラクタードライバー 24,224 22,602 20,399
レジ係、ドライバー(大型) 29,170 27,449 25,737
職工(グレードなし) 17,447 16,102 13,310
職工Ⅲ 21,942 20,167 17,948
職工Ⅱ 23,699 22,602 20,399
職工Ⅰ 29,170 27,449 25,737

(出所)表1に同じ

経営者側からは不満の声も

ケニヤッタ大統領は、8月8日に予定されている大統領選挙に立候補することを決めており、最低賃金の大幅な引き上げは低所得者層を中心とした有権者の支持を固める狙いがあったと考えられる。これに対し、業界団体や企業経営者らからは不満の声が上がっている。ケニア雇用者連盟は、最低賃金の引き上げに理解を示しつつも、18%の引き上げ幅は予想外に大きく、ケニア企業の競争力が低下し雇用が失われることになるとして反発している。

(島川博行)

(ケニア)

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