NAFTA再交渉に関するパブリックコメントの受付開始-6月27日に公聴会を開催-

(米国)

ニューヨーク発

2017年05月24日

 通商代表部(USTR)は5月23日、北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉に関するパブリックコメントの受付を開始した。5月18日付の議会への再交渉通知書に記載された分野のほか、原産地規則や政府調達などを含む幅広い分野が対象になっている。USTRは6月12日にパブリックコメント募集を締め切り、6月27日に公聴会を開催する。意見募集の結果は、NAFTAの交渉開始30日前までに、USTRが公表する交渉目的の詳細に反映される見込みだ。

パブリックコメントの締め切りは6月12日

USTRは、5月23日付の連邦官報PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)で、NAFTAの再交渉に向けたパブリックコメントの受付開始を発表した。USTRは、NAFTAの再交渉に係る議会通知を5月18日に行い、再交渉の方向性や内容などに関する意見募集を実施するとしていた(2017年5月19日記事参照)。今回のパブリックコメント募集は、この意見募集の一環だ。

パブリックコメントの提出期限は6月12日に設定されている。提出は、連邦政府の意見募集サイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますにおいて行う(注1)。意見募集は、デジタル貿易、知的財産、規制実施、国有企業、サービス、税関手続き、衛生・植物検疫措置、労働、環境、中小企業支援など前述の通知書で明記されていた分野に加えて、以下のとおり、政府調達や競争法関連の事項についても対象とする広範な内容になっている。また、NAFTAの特恵関税を利用するための条件を規定する原産地規則は、議会通知書には明記されていなかったものの、今回の意見募集の対象に含まれている。

a.NAFTA近代化に向けた全般的および製品別の交渉目的

b.カナダおよびメキシコとの貿易品に課されている関税の撤廃や非関税障壁の撤廃・削減を行った場合に、米国製造業者や消費者に生じる経済的な費用(economic costs)や利益

c.以下の事項を含む製品別の対応〔HTSUSコード(米国の関税分類番号)で示すこと〕

(1)特定製品の輸出入に係る関心事項(interests)および障壁

(2)交渉で議題とすべき特定の制度に関する経験

(3)カナダとの貿易に関して維持されている関税への対処。NAFTAでのカナダおよびメキシコとの貿易における輸出の優先事項と輸入に係るセンシティブ分野への対処方法を含む

d.通関および貿易円滑化に関し、交渉で議題とすべき事項

e.原産地規則または原産地認定手続き(origin procedures)に係る適切な改定方法

f.交渉で議題とすべきカナダとメキシコにより不当に課されている衛生・植物検疫措置や貿易の技術的障害

g.カナダおよびメキシコとの間のサービス貿易の障壁

h.デジタル貿易に関して議題にすべき事項

i.貿易に関わる知的財産権に関して議題にすべき事項

j.投資に関して議題にすべき事項

k.競争関連の事項(competition-related matters)で議題にすべき事項

l.政府調達に関して議題にすべき事項

m.環境関連で議題にすべき事項

n.労働関連で議題にすべき事項

o.中小企業に関して特に議題にすべき事項

p.貿易救済措置に関して議題にすべき事項

q.国有企業に関して議題にすべき事項

交渉目的の詳細に反映される見込み

USTRはまた、6月27日にワシントンの米国際貿易委員会(ITC)で、NAFTAに関する公聴会を開催すると発表している(注2)。

2015年貿易促進権限(TPA)法105項は、再交渉開始の30日前までにNAFTAの交渉目的の詳細を一般に公開することをUSTRに求めている。パブリックコメントと公聴会の内容は同交渉目的の詳細に反映される見込みだ。

(注1)書面での提出も可能だが、USTRはウェブサイトからのコメント提出を強く推奨するとしている。コメント提出に係る手続きについては連邦官報を参照。

(注2)公聴会は必要に応じて、6月28日までの2日間で開催される予定。公聴会での証言を望む関係者は、前述のパブリックコメントの提出期限である6月12日までに、証言内容の概要などをUSTRに提出する必要がある。

(鈴木敦)

(米国)

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