エチオピアの工業団地に日系企業専用スペース計画-「エチオ-ジャパンビジネスフォーラム」を東京で開催-

(エチオピア、日本)

中東アフリカ課、アディスアベバ発

2017年05月12日

 エチオピアのアハメッド・アブタウ工業相が率いるミッションが来日した機会を捉え、ジェトロは4月25日に在日エチオピア大使館と「エチオ-ジャパンビジネスフォーラム」を東京都内で開催した。約240人の参加者を集めた同フォーラムでは、エチオピアの投資環境や日本政府が取り組む産業政策対話のほか、開発中の工業団地内の日系企業専用スペース計画などが紹介され、日本企業の進出を呼び掛けた。

商工会議所間で協定締結、2国間投資協定の予備交渉開始に合意

アハメッド・アブタウ工業相は基調講演で、アフリカ経済は全体として近年苦しい状況にあるが、エチオピアは好調だとし、中国、トルコ、インドなど外資が積極的に進出している現状を紹介した。エチオピアは、2025年までに下位中所得国入りし、アフリカにおける工業の中心国になることを目指しており、対話のパートナーとしてエチオピアで存在感を示す日本の経験に学ぶことが多いという。一方でアハメッド氏は、中国やインドの企業に比べると日本企業の進出はエチオピアではまだ少なく、日本企業がちゅうちょする理由を学ばねばならない、とした。

来賓あいさつに立った斎田伸一駐エチオピア日本大使は、エチオピアでは2016年10月に非常事態宣言が発令されたが、現在の治安は安定しているとし、ジブチ港までの鉄道が開通する予定であることや工業団地の開発状況を紹介し、投資環境の整備が進んでいることを説明した。前週には両国政府が2国間投資協定の予備交渉開始に合意したことを明らかにし、アフリカの中でも先駆的な取り組みだと強調した。

日本商工会議所の西谷和雄国際部担当部長は、多くの人口を抱え、高い経済成長を続けるエチオピアには日本企業の関心も高まっているとし、前日の4月24日にエチオピア商工会議所と協力協定を締結したと発表した。日本全国515の商工会議所を会員とする同会議所が協定を締結したことにより、両国間の企業交流が活発化することが期待される。

エチオピア商工会議所のソロモン・アウェワーク会頭とエンダカチョウ・スメ事務局長は、来日したエチオピア企業を聴衆に紹介し、日本企業との新たなビジネスに期待していると述べた。同会議所は、1942年に設立された歴史ある機関で多くのビジネスマッチングなどを行っており、官民対話のプラットフォームも運営してビジネス環境の問題解決に取り組んでいるとした。また、2017年10月下旬には国際貿易フェアを首都アディスアベバで開催すると発表した。

日エ産業政策対話の日本側リーダーを務める政策研究大学院大学の大野健一教授は、2009年に開始された産業政策対話がエチオピアの現5ヵ年計画(GTP2)策定を支援したことを紹介。現在は主に「QPC(品質、生産性、競争力)」支援と日本企業誘致をエチオピア政府から要望されており、新たに「ハンドホールディング〔地場企業のハンズオン(個別)支援〕」を準備中だ、とした。投資誘致の課題としては外貨不足や税制・通関の予測不可能性が大きい点を挙げ、インフラの問題は中長期的には解決に向かうとの見通しを示した。

ジェトロ・アディスアベバ事務所の関隆夫所長は、外貨不足については当面の改善は見込めないが、政府は製造業優遇の方針を打ち出しており、2017年3月の中央銀行の外貨配分に関する新指令を紹介し、事業環境改善に取り組んでいるとした。2017年6月中旬にはジェトロがエチオピア・ビジネス投資ミッションを派遣する予定だとし、関心を寄せる企業の参加を呼び掛けた。

写真 基調講演を行うアハメッド工業相(ジェトロ撮影)

工業団地内に新たな「日系特別区」開発の構想も

エチオピア投資委員会のアベベ・アベバイエフ副長官は、投資政策決定の最高機関は首相が議長を務めているとして、投資誘致のための取り組みを紹介した。電力料金は安価で、アフリカ最大級の水力発電所も建設中だ。主要な回廊地帯を結ぶ鉄道ネットワークを計画しており、物流網の整備も進める。開発中の工業団地には日系企業専用のスペースも用意しており、今後の日本企業の投資に期待している、と述べた。また、エチオピア工業省のアハメッド・ヌル・オマー政策計画局長は操業中の11の工業団地を紹介し、入居企業の多くを中国、インド、韓国などが占めていることを説明した。

なお、プノンペン経済特区(合弁会社)の上松裕士取締役兼最高経営責任者(CEO)は、カンボジアの最低賃金が過去5年で急上昇しており、主に労働集約型産業の次の進出先として、エチオピアを考えていると述べた。ボレレミ2工業団地内に「日系特別区」を開発する構想があり、エチオピア投資委員会と契約締結に向けて交渉中だとした。

繊維・縫製産業を中心に、新興国のみならず先進国からの投資流入が活発化しているエチオピアに、日系製造業の進出が増加するのか、今後の展開が注目される。

(小松崎宏之、関隆夫)

(エチオピア、日本)

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