NAFTA見直しをチャンスと捉える声も-アラバマ州で自動車部品商談会(2)-

(米国)

ニューヨーク、アトランタ、シカゴ発

2017年03月30日

 米国南東部は国内市場向けの製造拠点という面で近年、自動車・同部品の投資を呼び込んでおり、米国向けに生産を拡大するメキシコと競合関係にあるとみることもできる。南東部の産業界からは、トランプ政権による北米自由貿易協定(NAFTA)見直しなどによって、同地域の競争力がメキシコに比べて高まるというプラス面を指摘する声も聞かれる。連載の後編。

<プラス面に注目し米国への投資拡大を期待>

 トランプ政権の通商政策について、在米日系企業の間では、特にサプライチェーンが形成されているメキシコとの関係で、NAFTAの見直しや国境調整税の導入などが懸念されている。ただし、南東部は製造拠点ということでメキシコとは競合している側面があり、トランプ政権の政策に期待する声が聞かれた。

 

 アラバマ経済開発パートナーシップ(EDPA)のスウェル副社長は、投資誘致という観点から、トランプ政権によるNAFTA見直しなどのプラス面に注目する。「1980年代と同様に、貿易摩擦を避け、米国への投資を増やす動きが出てくる」として、むしろ外国企業による対米投資のより一層の拡大に期待をのぞかせる。実際、ジョージア州アトランタ近郊に工場を持つ、日系大手自動車部品用素材メーカーA社は、メキシコを最有力候補地としてきた新工場建設を見送り、米国などでの生産能力増強を新たに検討しているという。

 

 一方、メキシコでの生産を増強する動きもみられる。人件費が安価なメキシコに、労働力が必要な作業は残すという考えは依然根強い。2月中旬には、アラバマ州に工場を持つ日系大手自動車部品メーカーB社が、既存のメキシコ2工場の生産能力を増強することを明らかにした。NAFTA見直しへの懸念もあるが、コスト競争力が高いとみての判断だ。

 

<強まるか現地調達強化の方向>

 今回、商談会に出展した企業の中からも、トランプ政権の政策を前向きに捉える声が聞かれた。2016年、ジョージア州に自動車用アルミ部品の輸入販売会社を設立したC社は「当社は日本、中国、タイに製造拠点があり、そこから製品を輸入している。メキシコには競合相手がおり、トランプ政権によって、メキシコとの間で関税などが課せられるようであれば、当社にとっては競争上有利に働く」とみている。

 

 プラスチック成型部品を製造するD社(ジョージア州)は「取引先の自動車メーカーはこれまでも現地調達強化の方針だった。トランプ政権になって、リスク管理のため、よりその方向性を強めており、チャンスと感じている」と期待を示す。

 

 ただし、同社はメキシコにも工場を有している。現在は米国から部品・原材料を送り、メキシコの工場で製品にして、それを再び米国に輸出している。「NAFTA見直しで関税がかかるようになれば、輸出入の往復で関税が賦課されることになり、大きなコストアップになる」と懸念する。このため、メキシコ側の工場は現地販売の強化も検討しているという。

 

 日本から参加したE社(自動車用鋼管製造)も「現状は米国に製造拠点がなく、トランプ政権によるアンチダンピング税や国境調整税の動きなどを懸念している」と述べる。個々の企業の立地やビジネス形態によって、期待と懸念が入り交じる状況となっている。

 

(若松勇、河内章、堀田基)

(米国)

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