広州市で日中中小企業シンポジウムを開催

(中国)

広州発

2017年03月14日

 ジェトロ広州事務所は2月23日、広東省政府や現地日本商工会と連携し、広州市で「日中(広東)中小企業シンポジウム」を開催した。日中双方の政府部門が中小企業支援策などを紹介したほか、中小企業経営者が自社のイノベーションに向けた取り組み事例などについて説明した。日中双方で計331人(うち日系企業158人、中国側173人)が参加した。

<中小企業向けの各種補助金制度を整備>

 本シンポジウムは前年に続き2回目で、日中国交正常化45周年イベントにも位置付けられた。政府部門の中小企業支援策や企業のイノベーション事例を広く紹介し、各社に役立ててもらうことを目的としている。

 

 広東省中小企業局民営経済処の●(登におおざと)承紅副処長は、中小企業支援策について紹介し、2015年以降、基金の設立、減税、無料法律相談、手続きの簡素化をはじめとするサービスの拡充など、中小企業向け支援策を一層強化していると強調した。

 

 広東省科学技術庁政策法規処の史利兵氏は、イノベーション支援策について説明した。中小ベンチャー企業が倒産した場合、投資したファンドに対し投資額の30%〔1件当たり上限200万元(約3,400万円、1元=約17円)〕を、貸し出した銀行に対しては回収不能額の約10%(1件当たり上限200万元)を補償する制度について紹介した。また、中国企業、学校、研究所が海外で研究開発センターを設立する場合は1件当たり150万元を補助する制度や、中国企業と海外企業が先進分野で共同研究や合作プロジェクトを推進する場合には1件当たり最大で100万元の補助金を拠出する制度についても紹介した。

 

 ジェトロ北京事務所・知的財産部の本間友孝部長は、日本における中小企業の知財動向と知財支援施策について以下のように話した。

 

 日本の企業総数382万社のうち、中小企業は99.7%を占めている。中小企業は「知的財産を管理する人材が不足」しており、特に小規模事業者では「出願などの知的財産活動に費やす資金が不足」する問題も抱えている。特許権を所有する企業あるいは活用する企業の売上高営業利益率は、所有していない企業よりも高い。特許権を持つ中小企業の売上高営業利益率は、大企業の売上高営業利益率の平均を上回る。特許庁は研究開発、権利化、製品、海外展開まで、各段階に合わせて知的財産権に関するさまざまな中小企業支援を行っており、早期審査、面接審査や特許庁職員の個別訪問による支援などに加え、近年はデザイン支援や知財金融支援なども行っている。

写真 日中合計で331人が参加したシンポジウム(ジェトロ撮影)

<「高付加価値化が中国企業発展の唯一の道」>

 日本の企業経営者を代表して、中井工業(本社:兵庫県加西市)の中井基弘社長が、自社の取り組みについて次のように講演した。

 

 1934年に創業し、1951年から「白心可鍛鋳鉄」という鋳物の専門工場として、厚さ3ミリの薄肉製品から50ミリ程度の肉厚製品までを製造している。白心可鍛鋳鉄は「溶接が可能な鋳物」として、ろう付け、多用途溶接などを行う部分に多く用いられている。現在、日本で白心可鍛鋳鉄を行う企業は当社のみで、あらゆる素材を顧客に提供するため、生産設備の導入や営業活動も積極的に行っている。中国ではこれまで委託生産工場に対する技術指導を主に行ってきたが、2014年に上海市自由貿易試験区内に現地法人を設立した。今後、中国市場での内販に注力していく方針だ。

 

 中井氏の、営業活動がうまく進まない中でも諦めず粘り強く取り組んだ経験談や、「規模は小さくても他社に負けないモノづくり」の重要性について強調した講演には、参加者から「勇気づけられた」「日本と中国の中小企業経営の違いを象徴する内容だった」といった声が聞かれた。

 

 中国企業を代表して、広東省仏山市にある広東天安新材料の呉啓超董事長が登壇した。住宅や自動車向けの内装材料製造会社で、毎年、売上高の約4%を研究開発に投入しているほか、設備導入や外部専門家(中国科学院や日本の同業他社など)と提携して技術レベルの向上に努めているという。その結果、自動車内装分野では、中国の地場ブランド車をはじめ、日系やフランス系ブランド車にも供給が始まるなどの成果につながっているとし、「日本企業は高品質製品、あるいは原材料の分野で絶対的な優位性を誇っている。他方、中国は市場や生産力などの面で大きな魅力がある。日中企業間の交流や提携を進め、補完・共存関係を構築することで、イノベーションが推進される。製品の『高付加価値化』を進めることが、中国企業発展の唯一の道だ」と強調した。

 

(房納、米川拓也)

(中国)

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