VAT還付請求の「みなし否認」案件の審査を再開

(フィリピン)

マニラ発

2017年02月10日

 フィリピン内国歳入庁(BIR)は1月3日、付加価値税(VAT)の還付請求手続きに関する通達を出し、2014年の通達で「みなし否認」とされていた還付請求について、あらためて審査することを明らかにした。進出日系企業の訴えに対する最高裁判所の判決を受けての見直しでもあり、現地では今回の決定を歓迎している。

2014年の通達が混乱のきっかけ>

 VATの還付手続きについては、20038月に公布された通達No.492003によって、還付の権利が発生してから2年以内に請求を行うなど還付裁定までのスケジュールが定められた。この通達によると、還付請求申請をしてから30日以内(延長が認められた場合は最長60日以内)は必要書類の追加提出が認められ、追加書類を含めた最終申請書類を提出してから120日以内にBIRから還付裁定結果を通知するとされていた(表参照)。

 

 しかし、20146月に新たな通達No.542014が公布され、結果通知までの期間などが変更となった。2年以内という還付申請期限に変更はないが、最初の還付請求申請後の追加書類提出は事実上認められず、申請時に必要書類を全てそろえておかなければならない。また、申請後120日以内にBIRから還付決定通知のない申請案件は自動的に否認と見なされることになった。さらに、本通達以前の申請案件のうち、2003年の通達に沿って申請後30日以内に必要書類を提出するなどして、最初の申請から120日を経過している案件は全て否認と見なされることになったため、申請手続き中案件が自動的に否認となるケースがあり、企業から見直しの要望が出ていた。

表 過去のフィリピン内国歳入庁通達の主な内容

<最高裁が201612月に日系企業の訴え認める判決>

 2014年の通達No.542014に対しては、日系企業のピリピナストータルガスが最高裁判所に上告し、最高裁は訴えを認め、同通達は納税者の権利を著しく侵害しているとして適用を否定する判決を201612月に下していた。

 

 最高裁判決を受け、BIR201713日に通達No.12017を公布し、通達No.542014にて「みなし否認」した申請案件を審査対象とすること、および2003年の通達No.492003に基づき審査することを認めた。ただし、(1)還付権利が発生してから2年を超えた案件、(2BIRから既に書面にて否認された案件、(3BIRから全額あるいは一部還付承認を取得している案件、(4)提訴中の案件(ただし提訴を取り下げる根拠のある案件は除く)については検討の対象外となる。

 

(鈴木翔三)

(フィリピン)

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