日本の中小企業育成の経験をアピール-マプトで「日・モザンビーク中小企業振興政策セミナー」開催-

(モザンビーク)

ヨハネスブルク発、中東アフリカ課

2016年12月06日

 ジェトロはモザンビーク投資促進センター(CPI)との共催で11月21日、モザンビークの首都マプトで「日・モザンビーク中小企業振興政策セミナー」を開催した。セミナーではワールド・ビジネス・アソシエイツの河野誠特任顧問が、中小企業振興の意義について日本の経験を基に講演した。パネルディスカッションでは中小企業育成の重要性について、現地の政府関係者や金融関係者らを迎え議論した。セミナーには現地政府のほか、進出日系企業や国際機関の関係者ら60人が参加した。

<アジア諸国への日本の貢献を説明>

 ジェトロは112122日に、中小企業診断士で生産・技術・経営管理などを専門とする河野氏をモザンビークに招き、日本の中小企業振興政策と具体的な支援方法を紹介するためのセミナーなどを開催した。セミナーは、経済産業省による「ロビイング活動支援事業」の一環として、モザンビークの要人や政府関係者らに対して日本政府および日本企業の貢献の可能性をアピールするとともに、日本に関する理解を深めてもらい、両国の関係を強化するために実施した。

写真 「日・モザンビーク中小企業振興政策セミナー」の様子(ジェトロ撮影)

 冒頭のあいさつで、在モザンビーク日本大使館の水谷章大使は「日本では企業の99.7%を占める中小企業が、起業と技術開発を通じて経済を牽引している。モザンビークは天然資源の相次ぐ開発の動きから、その潜在力が注目されている。経済成長を遂げる上で、中小企業は国内のさまざまな産業を底上げする役割を担う」と強調した。

 

 続いて、モザンビーク経済団体連合会(CTA)のロジェリオ・サモ・グート副会長はあいさつの中で、「CTAのメンバーの多くは中小企業だが、融資へのアクセスが困難なことや生産性が低い、景気の影響を受けやすい、などの課題を抱えている。日本の中小企業がこうした問題をどう乗り越えてきたかということについて、理解を深めることは重要だ」と期待を寄せた。

 

 モザンビーク中小企業振興機構(IPEME)のクレア・マレウス・ジンバ総裁は「モザンビーク企業の98.7%は中小企業で、5156社が登録されている。政府は現在、中小企業育成に向けた法的枠組みの整備と見直しを進めている。各種手続きの簡素化などを図り、企業の国際競争力を強化したい」と語った。

 

 河野氏は「モザンビークにおける中小企業振興のあり方-日本の経験をもとに-」と題した講演で、日本の中小企業振興策の変遷やアジアの経済発展における日本の貢献について紹介した。同氏は「日本では(第二次世界大戦の)戦後間もない1948年に中小企業庁が設立され、政府が主導して低金利融資の提供や生産性向上、技能向上のためのノウハウについて啓発活動を行うなどして中小企業の育成を図ってきた」と過去の政策の変遷を説明した。また、日本政府や日本企業は「ベトナムやフィリピンなどのアジア諸国でも、日本の経営手法を指導するなどして中小企業の技能向上、ひいてはその国の経済発展に貢献してきた」と述べた。

 

CSRの一環として中小企業に技術指導>

 講演に続くパネルディスカッションでは、国連開発計画(UNDP)の三舩正喜経済計画分析官がモデレーターを務め、パネリストには河野氏、IPEMEのジンバ総裁のほか、中小企業連合会(APME)のイノセンディオ・パウリーノ会長、三菱商事が出資するアルミ製錬企業モザールの株主関係・地域開発マネジャーのマテウス・モッセ氏、スタンダード銀行のサシャ・ビエイラ能力開発課長、商業投資銀行(BCI)のムクタール・アブドゥルカリモ理事が参加した。

 

 モザールのモッセ氏は、企業の社会的責任(CSR)の一環として中小企業に対する技術指導などを行っている事例を紹介し、日系企業が現地に貢献していることを示した。会場から「金利が高く融資へのアクセスが極めて困難な状況で起業できない」との声が寄せられ、それに対してパネリストからは中小企業向けの低金利の融資を拡充させるよう取り組んでいることや、国際機関や援助機関が実施している中小企業育成プログラムなどが紹介された。

 

 閉会のあいさつをしたCPIのローレンソ・サンボ総裁は「中小企業振興に向けた取り組みを進めているが、予算や人材などのリソースが限られている。日本の政策施行における取り組みは当国でも参考にできる点が多く、示唆に富む講演だった。今後も両国の経済関係を強化させていきたい」と締めくくった。

 

<経営者へのワークショップも開催>

 なお、翌22日にはマプト市内でAPMEのパウリーノ会長のほか中小企業経営者12人に対してワークショップを開催し、河野氏が「ビジネス開発の手法」と題して講演した。意見交換のセッションでは、現地の企業経営者から「当地に進出している日本企業とビジネスをするためには何がポイントになるか」との質問があり、これに対して河野氏は「高い品質や技術を持っていることがポイントになる。政府が提供するビジネス開発能力向上プログラムなどに参加して能力開発を図ってほしい。また、ビジネス関係者とのネットワーク構築も重要」と助言した。

写真 中小企業経営者向けワークショップの様子(ジェトロ撮影)

 モザンビークには、商社や建設会社など約15社の日本企業が進出している。こうした企業からは、下請けとなる地場企業が育っていないことが投資の障壁になっている、との指摘がある。今回の「日・モザンビーク中小企業振興政策セミナー」は、現地政府に対して日本企業が抱える問題や中小企業育成の重要性を訴える貴重な機会となった。ジェトロは引き続き、投資環境の改善について同国政府に働き掛けていく。

 

(高橋史、高崎早和香)

(モザンビーク)

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