第2階層ビザの最低給与基準を引き上げ-11月24日から適用-
(英国)
ロンドン発
2016年12月02日
内務省は11月3日、入国管理法の厳格化に向けた改正案を発表した。今回の改正の最大のポイントは、第2階層ビザ発給に関する最低給与(年収)基準の引き上げで、11月24日以降申請分から適用されている。政府は、移民抑制と英国民の雇用拡大に向け、2017年4月にさらなる入国管理法の改正を実施するとしている。
<第2階層ビザは日系企業に大きく影響>
今回の改正内容は本文70ページ、説明資料16ページで多岐に及ぶが、日系企業に大きく影響するのは第2階層(Tier2)ビザの発給に必要な最低給与額の引き上げだ。詳細は表のとおりで、11月24日から実施されている。
なお、2016年11月23日までに発給を受けた第2階層(一般)経験者ビザと、第2階層(企業内転勤)短期ビザを英国内で延長する場合には、2017年4月までという期間限定で、従来の2万800ポンド(約297万円、1ポンド=約143円)、2万4,800ポンドの最低給与額が適用される。現在、第2階層(企業内転勤)ビザ取得者を対象に免除されている健康保険付加料(IHS、1人当たり年間200ポンド)の導入は今回見送られたが、2016年度内に導入される可能性が高いとみられている。
<2017年4月以降、さらなる改正を計画>
今回の改正は、移民助言委員会(Migration Advisory Committee:MAC)による2016年1月および3月の「第2階層に関する勧告」を受けて、ジェームズ・ブロークンシャー移民相(当時、現北アイルランド相)が3月24日に発表した声明「外国人労働者への依存を減らすためのビザ改正」に従ったものだ。同声明で政府は、企業内転勤ビザ発給対象者を長期滞在する企業幹部に絞ることで、若手・中堅職の英国民への代替を進める方針を明確にしている。さらに、今回は盛り込まれなかったものの、次回に予定される改正内容について次のように言及している。
(1)1人当たり1,000ポンドの「移民技術賦課金(Immigration Skills Surcharge)」の導入:英国人労働者の技術向上に向けた訓練資金として使うと説明。
(2)第2階層(企業内転勤)短期ビザの廃止
(3)第2階層(企業内転勤)長期ビザの最長9年までの延長条件である最低給与額を年収15万5,300ポンドから12万ポンドに引き下げ
(4)7万3,900ポンド以上の年収がある者への12ヵ月以上の勤務要件を撤廃
2017年4月以降、これらが盛り込まれると予想される。いずれも、日系企業の活動に大きな影響を及ぼすことから注視が必要だ。
(岩井晴美)
(英国)
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