関連企業間取引は管理強化の方向-通関規則の最新動向に関するセミナーを広州で開催-

(中国)

広州発

2016年11月10日

 ジェトロは広州で10月20日、中国で最近1年間に施行された通関関連規則に関するセミナーを開催した。広東省への企業進出をサポートしている広東真広企業管理顧問の秦華・副総経理が、通関・検疫手続きの簡素化、税関による関連企業間取引に対する管理強化の動きなどを紹介した。

<通関・検疫手続きは簡素化>

 秦副総経理の説明は以下のとおり。

 

 中国の通関関連規則については、最近1年間で緩和された部分と強化された部分がある。緩和された部分については、通関・検疫申告の(1)一本化と(2)オンライン化、特定区域内(注1)での(3)通関の一体化と(4)検疫の一体化、が挙げられる。

 

 (1)に関して、以前は貨物データの入力、申告、検査が税関と検疫局で別々に行われていたが、201512月以降は、データを1回入力すれば、自動的に申告書類が税関と検疫局へ届き、荷降ろし検査は輸出入通関時のみとなっている。

 

 (2)について、従来通関申告内容の修正や削除をするときは税関へ出向く必要があったが、201512月以降、自社のパソコンで修正・削除を申請することが可能となった。ただ、1社の四半期ごとの誤記や修正の回数(通関申告ミスの比率)が、中国国内における同時期の平均値より大きいと、企業ランクの降格につながるため、注意が必要だ(注2)。

 

 (3)に関して、以前は貨物を輸入する際、空港や港に加えて企業所在地の税関でも通関が必要だった。しかし、特定区域内の税関間で通関申告データのオンライン上での共有化が進み、当該区域内であればどの税関でも通関でき、1回の通関で貨物を輸入できるようになっている。これにより、納品先近くの税関で貨物を通関でき、かつ通関が1回で済むことで、物流や通関にかかる費用や時間の節減が可能となった。

 

 (4)については、201511月から施行されているが、設備を輸入する際は、港と企業所在地でそれぞれ検疫検査を行う必要があり、新規定に沿った運用がされているとは言い難い。

 

<輸入価格の審査を強化>

 他方、関連企業間の貿易取引、特許権などの使用料(ロイヤルティー)の審査は強化されている。

 

 まず、輸出入通関証明書については、20163月以降、申告項目が大きく変更された。貿易取引全体の流れが把握できるよう、売買契約の相手先のほか、輸入通関証明書には原産地、輸出通関証明書には最終仕向け地の記載が必要となった。このほか、輸入価格の過少申告を取り締まるため、a.貿易相手との特殊関係確認、b.価格影響確認、c.ロイヤルティー確認、についても記載が求められる。

 

 a.については、次の項目のいずれかに該当すれば、貿易相手先と「特殊関係」があると見なされる。

 

1)当事者双方が同族または同一グループの企業である。

2)当事者の一方の社員が他方の幹部または取締役を兼務している。

3)当事者の一方が直接または間接的に他方を支配している(注3)。

4)当事者双方が直接または間接的に第三者に支配されている(あるいは第三者を支配している)。

5)直接または間接的に他方の株を5%以上保有している。

6)当事者双方間にパートナーシップ、独占代理・販売など経営上の関係がある。

 

 a.で「特殊関係あり」に該当すると、b.では相手先との売買契約書とインボイスのほか、輸入価格の適正さを証明する資料の提出を求められる。これらを提出できないと、税関は輸入貨物を留め置き、価格審査を実施するので注意が必要だ。

 

 また、c.については、中国側の輸入者が海外企業に対しロイヤルティーを支払っている場合、税関が課税対象の輸入貨物にロイヤルティーと関係性があると判断すると、輸入価格の過少申告を問われ、関税と増値税の追納が必要となる。

 

 一例を挙げると、日本本社から金型を輸入したある日系企業では、3年間で500万ドルのロイヤルティーを本社へ送金していたが、税関により金型の輸入価格を過少申告したと見なされ、約800万元(約12,000万円、1元=約15円)を追徴課税されたことがある。

 

 表のとおり、海外の特許技術が含まれる輸入品に加え、中国国内で販売される輸入品も税関による管理の対象となっている。最近では、自動車部品やICをはじめ電子製品を輸入し、中国国内で加工・販売するメーカーも、税関の重点監視対象となっている。

表 税関が輸入品とロイヤルティーとの間に関係性ありと見なす根拠

<輸出時の価格審査も厳格に>

 税関では、関連会社間取引における輸入価格の監視も強化しており、最近ではプラスチック関連企業が過去3年間に輸入した金型・設備の輸入価格を重点的に調査している。例を挙げると、ある日系企業が同一種類の金型を、市場価格の変動を無視して数年前から同じ価格で輸入していたところ、税関から価格の過少申告を指摘された。

 

 ほかにも、中国の税関では輸入品のCIF価格に対し課税するが、香港のFOB価格をCIF価格として申告した企業が税関から運賃・保険料分の申告漏れを指摘されたケースや、香港企業を介して輸入しながら、輸入価格に同社の利益を合算していない点を指摘された例がある。いずれも、税関により追徴課税、罰金などの処分を受けている。

 

 一方、中国では以前から輸出価格を水増し申告したり、いったん輸出した製品を密輸入し再び輸出して不正に増値税の還付を受けようとする悪質な行為が横行している。これを受け、2016年以降、広東省深セン市の税関では、輸出時にも価格審査が厳格に行われており、通関に時間を要する点に注意が必要だ。

 

(注1)現状では、(1)深センなど広東省のほか、(2)北京・天津・石家庄、(3)華東・西南の長江デルタ経済帯、(4)東北、(5)西北、の各区域。

(注2)密輸行為や税金滞納の有無などにより、税関は企業を4段階で分類・管理しており、段階により通関時の検査率が異なる。中国国内における通関申告ミスの平均比率は、今後ウェブサイトで検索が可能になる(税関は現在、システムを整備中)。

(注3)一方が他方の財務や経営上の意思決定に際して決定権を有し、かつ当該決定権によって他方の経営活動から利益を獲得できること〔(4)も同様〕。例えば、日本本社が香港に子会社を設立し、香港子会社が中国に会社を設立していると、日本本社は間接的に中国の孫会社を支配していることになる。

 

(粕谷修司)

(中国)

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