為替協定34号を改定、輸出収入の両替義務を緩和

(ベネズエラ)

カラカス発

2016年09月28日

 ベネズエラ企業が輸出により得た外貨を自身の口座に留保できる割合を定めた為替協定34号が改定された。これまでは輸出収入の6割は外貨のまま留保できるが、残りの4割は通貨ボリバルに両替することが義務付けられていた。今回の改定により、輸出者が自己資金を投じて原材料や生産設備などを輸入した場合、投下した資金分は両替を義務付けられている4割から差し引くことができるようになった。ベネズエラでは2003年2月から外貨管理制度が敷かれており、国内外の資金移動は中央銀行が厳しく管理している。

<自己資金を投じる輸出企業に優遇条件を設定>

 99日付官報40985号に為替協定34号の改定が掲載された。為替協定34号は218日に発効、国内の輸出者が輸出により得た外貨をどのように扱うことができるかを定めており、輸出収入の6割は外貨として輸出者自身の口座に留保できるが、残りの4割は中央銀行を介してボリバルに両替することになっていた。両替する際は「補足的フロート制為替レートの外貨(ディコム)」(注)の為替レートが適用される(915日時点で1ドル=652.66ボリバル)。

 

 今回の改定の重要なポイントは第6条だ。同条では、輸出収入のうちボリバルへの両替が義務付けられている割合を4割から減額できる条件が示された。輸出者自身が保有していた外貨を投じて原材料や生産設備など輸出目的の生産活動に不可欠な投資を行った場合、投下した資金分は両替を義務付けられている4割から差し引いてよいというものだ。ただし、公的金融機関などからの融資に由来する外貨は、それらにより調達した財も含め自己資金として認められない。

 

 上記の適用を受けるためには貿易外国投資省への事前申請および承認が必要だ。また、第6条に係る手続きが完了するまでの期間は、「保護された為替レートの外貨(ディプロ)」の為替レートを申請することができない(第9条)。また第8条によると、第6条の適用には、国内に開設された外貨建て口座を経由して原材料や生産設備を購入することが条件となっている。本協定の改定に関し、規定の解釈が不明確な場合や規定されていない事象については、中央銀行または貿易外国投資省が判断を担う(第12条)。

 

<非石油部門の輸出促進で政府と民間団体の意見一致>

 石油が輸出額の9割以上を占めるベネズエラは、2014年中ごろから原油価格が下落したことにより深刻な外貨不足に陥っている。それまでは石油輸出により得た収入を中央銀行経由で民間企業に割り当てることで消費財や原材料を輸入し経済活動を維持していた。しかし、原油価格の下落により外貨の割り当てが急速に縮小しており輸入が減少、それに伴い国内経済に混乱が生じている。

 

 政府は貿易外国投資省主導で、民間企業が自身で外貨を稼ぐことができるような仕組みづくりを進めており、今回の制度改定は輸出促進策の一環といえる。自己資金がすぐに回収できるということであれば、資金を投じる投資家も増えるとみられる。

 

 ベネズエラ輸出協会(AVEX)のラモン・ゴジョ会長は、「今回の為替協定改定によりベネズエラの輸出企業は今までより利益を確保しやすくなる」と、貿易外国投資省との交渉の成果を強調し、輸出で得た外貨に対する自己裁量の幅が広がるとポジティブな見方を示した。また、最終的な目標は輸出で得た外貨の全額を自身の外貨口座に留保できるようにすることで、そのため外貨と自国通貨の比率を、現在の64から82に改定することも提案。さらに、現在は複数の省庁で行う輸出に係る行政手続きを1ヵ所に集約するための調整を進めており、順調にいけば2016年内に運用開始可能との見通しを明らかにした(「エル・ムンド」紙915日)。

 

 なお、日本企業への影響については、ベネズエラから輸出を行う日本企業は限られており、全体としての影響は軽微なものとなりそうだ。

 

(注)「補足的フロート制為替レートの外貨(ディコム)」は、201639日付官報第40865号で公表されたが、運用は始まっていない。同官報ではディコムの運用開始までは為替協定33号「副次的外貨システム(シマディ)」を継続するとしており、現在もシマディが運用されている。従って、正確には915日時点の為替レート1ドル=652.66ボリバルはシマディレート。99日付官報掲載の為替協定34号には「補足的なフロート制為替レートの外貨(ディコム)」と記載されているので、本文中では同様に記載している。

 

(松浦健太郎)

(ベネズエラ)

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