自動車の物品税を一律20%に変更も反発受け撤廃を検討-2016/2017年度予算案と税制改正案(2)-

(ケニア)

ナイロビ発

2016年08月19日

 2016/2017年度の予算案・税制改正案の連載2回目は、税制改正案のうち物品税のポイントを解説する。ロティチ財務長官は予算方針演説の中で、化粧品・美容製品、灯油、自動車の物品税を変更し、翌日から施行すると発表した。性急な税制改正に対して業界団体が反発し、自動車への課税は撤廃の方向で調整されているが、運用上、いつ撤廃されるのか不透明だという。

<自国産業の育成に逆行と自動車業界は反発>

 ロティチ財務長官は68日の演説で、2015121日に施行された自動車に対する物品税〔製造から3年未満の輸入車に対して15万ケニア・シリング(約15万円、Ksh1Ksh=約1.0円)、3年経過後の輸入車に対して20Ksh〕の課税方式を変更し、以前の物品税(CIF価格と関税の合計に対して20%)に戻すことを提案した(表1参照)。現行の物品税では、高級車を購入する富裕層に恩恵があり、中古の小型車を購入する所得層には不利となっており、公平性を確保するためとしている。201614月の自動車の新規登録台数は前年同期比30.3%減の23,903台となっており、小型車を中心に販売が急減していた。

表1 物品税制改正案

 一律20%の課税は、従来の物品税法で課税対象外となっていたケニアで製造された組み立て自動車(CKD)に対しても適用されることとなっており、自国産業の育成に逆行するとして自動車業界は強く反発した。また物品税の変更が、暫定税金徴収法(Provisional Collection of Taxes and Duties Act)に基づく財務長官令により、ロティチ長官の演説の翌日から施行されたことも問題視されている。

 

 その後、自動車業界の要望を受けたケニア製造業協会(KAM)がケニヤッタ大統領に物品税の撤廃を陳情した結果、政府はCKDへの20%の課税を撤廃する方向で調整を始めた。大統領の指示を受けたロティチ長官は、ケニア歳入庁(KRA)に対しCKDへの課税撤廃を公式文書として発出したものの、KRAがいつ内部手続きを変更し、同課税を撤廃することになるかは不透明だ。ゼネラルモーターズ(GM)イーストアフリカに出資している伊藤忠商事ナイロビ事務所の加藤徹也所長は「朝令暮改、かつ、運用が不透明な法令変更は販売実績・計画にも実質的に影響が出ていることは否定できない。ケニアの全般的な投資促進のためにも、特に税制に関しては透明性の高い計画的な導入と運用を期待したい」と話す。

 

<化粧品や灯油も物品税の課税対象に>

 ロティチ財務長官は、化粧品・美容製品に対しても6年ぶりに10%の物品税を課すとした。ケニアが加盟する東アフリカ共同体(EAC)域内では同製品に物品税が課されており、域内の税制の調和を図るためと説明している。地元紙によると、2016年のケニアの化粧品の市場規模は54Kshとみられ、10%の課税が実施された場合、5.4Kshの歳入増となる見込み。ケニアで化粧品などを販売しているロート製薬現地法人の代表を務める阿子島文子氏は「正規ルート以外の輸入が横行するケニア市場において、物品税の導入は正規ビジネスを行う企業の競争力を妨げる要因になる」と懸念している。

 

 同長官はまた、2011年に撤廃された灯油の物品税を復活させ、1リットル当たり7.205Kshを課すとした。物品税の撤廃後、ガソリンなどに灯油を混ぜて販売する業者が増加したことから、これを抑制するためとしている。

 

 ロティチ財務長官は、インフレ率を勘案した物品税を71日から適用すると発言していた。2015121日に施行された物品税法が、前会計年度における平均インフレ率に基づいて翌会計年度の71日から物品税を見直すと定めているためだ。二輪車、食料品、石油製品、たばこ、アルコール飲料などの物品税額は、前会計年度のインフレ率が勘案されて上昇する可能性が高い。ただし、インフレ率は品目ごとに異なり、適用されるインフレ率が総合なのか品目ごとなのかについては依然不透明だ(表2参照)。なお、前述した自動車、化粧品、灯油の物品税についてはインフレ調整は行われない見込みだ。

表2 品目別インフレ率

(島川博行)

(ケニア)

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