輸入に占める中国のシェア拡大、5年連続の貿易赤字か-2016年上半期の日中貿易から(2)-

(中国、日本)

中国北アジア課

2016年08月19日

 2016年上半期の日本の貿易総額に占める中国の割合は21.4%と、2015年通年に比べ0.2ポイント拡大した。輸出は17.1%で0.4ポイント縮小し、輸入は25.9%で1.1ポイント拡大した。日本の対世界貿易において中国は、貿易総額と輸入額で引き続き1位で、そのシェアは過去最高となっている。2016年通年の貿易総額は、減少幅は縮小するものの2年連続の減少が見込まれる。輸入が輸出を上回る状況は変わらず、対中貿易収支は5年連続赤字となる見通しだ。

<輸入の減少幅は大幅に縮小も、主要品目は軒並み不振>

 輸入は前年同期比3.4%減の7588,228万ドルとなり、前年上半期の13.1%減から減少幅が9.7ポイント縮小したものの、主要品目はほぼ全てで減少傾向が続いている。構成比28.5%と最大品目の電気機器は、通信機(スマートフォンに代表される携帯電話端末)で金額が増加に転じたものの、光電池(太陽光発電セル)の減少幅拡大を受け、全体では3.6%減となった。構成比が2番目の一般機械のうち電算機類(周辺機器を含む)は、ノートパソコンやタブレット型端末などの携帯用自動データ処理機の減少幅が前年同期より縮小した。原料別製品では、鉄鋼と非鉄金属が20%以上減少した。衣類・同付属品も中国の生産コスト上昇によるASEANへの生産拠点移管の進展により、減少傾向が続いている。品目別の特徴は以下のとおり。

 

1)電気機器は、主要品目の通信機の約70%を占めるスマートフォンなどの携帯電話端末で単価が前年同期より11.0%上昇したため、金額は前年同期比12.0%増となった。一方で光電池は、太陽光の買い取り価格低下の影響などから数量の減少と単価の下落がみられ、金額は32.1%減となった。

2)一般機械は、主要品目のノートパソコンやタブレット型端末などの携帯用自動データ処理機が、数量で前年同期比5.0%増となったものの、単価が10.2%下落したため、金額は5.7%減となった。

3)衣類・同付属品は、前年同期の14.0%減から5.5%減へと減少幅が縮小したものの、日本の対中輸入のシェアは引き続き低下している。中国からベトナム、バングラデシュ、インドネシア、カンボジアなどアジア新興国への生産移管が進んでいることが主因とみられる。

 

<通信機は輸入増、衣類は減少基調で推移か>

 2016年通年の対中輸入の見通しは以下のとおり。

 

1)電気機器のうち通信機は、下半期に米スマートフォン大手の新型機種発売や、近年普及が加速している格安スマートフォンの輸入増が予想されることから、2016年末にかけて増加が見込まれる。

2)衣類・同付属品は、アジアの新興国などの低賃金国への生産移管の進展と、日本の消費市場の低迷などの影響により、中国からの輸入は減少基調で推移するものとみられる。

3)化学製品や鉄鋼などの原料別製品は、中国から汎用(はんよう)品が輸入されている。2020年の東京オリンピックを控え、建材などの内需の増加で輸入が増えることも考えられるが、過剰生産問題を抱える中国からベトナムや中東へ汎用品の輸出が足元で増えており、日本向け輸出が減少する可能性がある。

 

 なお、調査レポートの全文は、ジェトロのウェブサイトを参照。

 

(島田英樹、方越、黄海嘉、田中琳大郎)

(中国、日本)

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