「グリーン経済」推進で環境・エネルギー分野に多数の商機-「ドバイ電力・水セミナー」を東京で開催-
(アラブ首長国連邦)
ドバイ発、環境・インフラ課、中東アフリカ課
2016年08月15日
ジェトロはアラブ首長国連邦(UAE)のドバイ電気・水庁の来日機会を捉え、クリーンエネルギー導入を推進するドバイのビジネスチャンスを紹介する「ドバイ電力・水セミナー」を8月2日に東京で開催した。セミナーでは同庁に加え、ジェトロ・ドバイ事務所や日本企業2社が同分野の可能性について講演を行い、企業関係者ら103人が参加した。
<有望な環境プロジェクトがめじろ押し>
ドバイは「グリーン(環境に優しい)経済」実現のため、クリーンエネルギーの利用推進を掲げており、環境・エネルギー関連市場の拡大が期待されている。
セミナーの冒頭で、ジェトロものづくり産業部の稲葉公彦部長が、ドバイには有望な環境プロジェクトがめじろ押しであること、日本企業も上下水道整備、海水淡水化、発電、植物工場など既に多様な分野で参入しつつあること、ジェトロも日本企業参入の機会として、10月にドバイ電気・水庁が主催して開かれる中東最大級の環境展示会「WETEX 2016」に初めてジャパンパビリオンを設置すること、などを紹介した。
続いてジェトロ・ドバイ事務所の安藤雅巳所長が、中東・北アフリカ(MENA)市場とUAEの環境分野のポテンシャルについて講演した。MENA市場は、世界トップクラスの人口増加率、高い若年層比率により拡大が続いている。
UAEは人口増で増大するエネルギー需要に関して「脱石油」経済を志向し、「UAEビジョン2021」などの国家政策にも、持続可能な環境・インフラ開発のためのグリーン経済の推進(省エネ・再生可能エネルギーなどの導入)を盛り込んでおり、今後、同分野の商機が拡大する見通しだとした。
<「グリーン経済」分野で500億ドル相当の入札を予定>
ドバイ電気・水庁のビデオ上映の後、ユーセフ・アル・アクラフ執行役員兼副社長が登壇し、ドバイや同庁の今後のプロジェクトや拡大するビジネス機会について、次のように紹介した。
UAEは国策として「グリーン経済」の実現を掲げており、(1)グリーンエネルギー、(2)グリーン投資、(3)グリーンシティー、(4)気候変動、(5)グリーンライフ、(6)グリーンテクノロジー、という主要6分野において各戦略を策定している。
中でもドバイは「ドバイプラン2021」の下で、(1)2050年までにエネルギーの75%をクリーンエネルギーに転換、(2)世界の都市で最低となる二酸化炭素排出量、(3)2030年までに政府や民間の建築物のエネルギー効率の改善、(4)20年以内に埋め立て地の廃棄物除去と持続可能な水力発電方法の追求、(5)電力によるクリーンな輸送手段の実現、といった目標を掲げている。2030年でのエネルギーミックスとしては、25%を太陽光、7%を石炭、7%を原子力、61%をガスで賄う計画としている。
ドバイ電気・水庁の活動として、最終発電容量5,000メガワット(MW)のソーラーパークや、同パーク内のイノベーションセンター、世界中の企業が利用できる研究開発(R&D)センター、途上国に水支援を行う財団「Suqia」の運営にも携わっている。また、同庁は前述の環境展示会WETEXと併催の「ドバイソーラーショー」と「世界グリーン経済サミット(WGES)2016」の主催者でもあり、多数の日本企業の参加を期待していると述べた。
ドバイ電気・水庁はこの「グリーン経済」の分野で、今後5年間で500億ドル相当のプロジェクト案件の入札を予定しており、具体的には(1)500~2,400MWクラスの発電プロジェクト、(2)送配電の各種設備調達や工事、(3)水の供給、(4)太陽光発電、(5)新エネ関連施設の建設、(6)コンサルティング、など分野を挙げた。ドバイにまだ拠点がない企業であっても、世界中から同庁のウェブサイトを通じて容易にベンダー登録申請が可能と締めくくった。
その後、既にドバイで同庁の水案件に関わっている日本企業2社から、現地での活動事例の紹介があった。上下水道などの調査・設計・施工管理を行うNJSコンサルタンツは、2005年にドバイ事務所を設立し、上水道マスタープランやポンプ場、送水パイプラインなどの計画策定で同庁のプロジェクトを多数受注し、WETEXにも2011年から毎年、参加している。現地では独特の契約形態や支払い手続きのフォロー、タフな競争などの課題はあるが、今後もインフラ整備のチャンスは拡大するとの見通しを示した。
また、老舗ポンプメーカーの酉島製作所は、2009年からドバイに拠点を持ち、ドバイだけでなくアル・アインやフジャイラなどのポンプ場、海水淡水化プラント、発電プラントなどに幅広くポンプを供給していると紹介した。
最後の質疑応答でアクラフ執行役員兼副社長は、ドバイの将来のエネルギーミックスに原子力発電が含まれている点について、アブダビで建設予定の発電所からの電力供給を想定しており、ドバイでの建設は考えていないとし、海水淡水化事業についての今後の手法については、浸透膜法に加えて蒸発処理法も併用するとコメントした。
(水野光、吉田雄介、米倉大輔)
(アラブ首長国連邦)
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