電気乗用車産業に地場企業や個人投資家らも参入-1年前の投資審査基準の緩和を受け-

(中国)

上海発

2016年08月26日

 電気自動車(EV)産業を育成するため、政府が1年前に電気乗用車分野への新規投資の審査基準を緩和したのを受け、自動車メーカーのみならず、地場企業や個人投資家らが続々と電気乗用車産業への新規参入の動きをみせ、長江デルタに電気乗用車工場を設立する計画を発表している。

<長江デルタで生産拠点の建設相次ぐ>

 政府は自動車産業の新規投資に対して認可制度を採用しているが、2015710日、これからの有望分野とされる電気乗用車産業を育成するために「電気乗用車企業の新設に関する管理規定」を施行し、電気乗用車分野への投資の審査基準を緩和した(注)。

 

 これと前後して地場自動車メーカーが次々と電気乗用車分野への投資を行ったことに加え、最近では、自動車製造に従事していなかった地場企業や個人投資家も電気乗用車産業に新規参入し、長江デルタにおいて同産業の生産基地を相次いで立ち上げた。

 

<オンライン動画の楽視集団はコンセプトカーを発表>

 オンライン動画サイトを運営する楽視集団は810日、浙江省政府と共同で記者会見し、同省におけるスマート電気乗用車の投資計画を発表した。同省徳清県に「楽視スーパー自動車生態体験園」(以下、体験園)を開設する計画で、投資総額は200億元(約3,000億円、1元=約15円)に上る。体験園の敷地面積は4,300畝(1畝=約667平方メートル)で、敷地内には年間生産能力40万台のスマート電気乗用車の工場もできる。楽視集団は201412月からスマート電気乗用車の研究開発を開始し、2016420日にコンセプトカー「LeSEE」を発表していた。

 

 また、浙江省杭州市にある中国の自動車部品大手の万向集団が、同市蕭山区に年間生産能力5万台の電気乗用車工場を設立することを目指し、政府に同プロジェクトの環境影響報告書を提出したと現地マスコミが報道した(810日)。環境影響報告書は工場設立の際に提出が求められるもので、それによると、万向集団が申請中の電気乗用車工場の投資総額は251,752万元で、4車種を生産する予定という。万向集団は1999年から電気自動車・部品の研究開発を始め、2013129日に米国の自動車用電池メーカーA123システムズ、2014218日には米国の電気自動車メーカーのフィスカーを買収した。杭州市で生産予定の電気乗用車は、フィスカーが開発した「カルマ」シリーズの2車種と「アトランティック」シリーズの2車種だ。

 

 さらに、自動車専門情報サイト「自動車の家」元代表の李想氏は、2015410日にベンチャー企業「車和家信息技術」(以下、車和家)を創業し、2016810日、江蘇省常州市の武進国家ハイテク開発区に「スマート自動車製造基地」の建設を始めた。同基地の敷地面積は約50万平方キロ、生産能力は年間30万台で、車和家は同基地でスマート電気乗用車を2車種生産する計画だ。1車種は走行距離が短い12人乗りの小型車で、もう1車種は走行距離が長いスポーツ用多目的車(SUV)だという。

 

<電子産業が集積する長江デルタは最適な立地先>

 長江デルタは自動車と電子産業の集積地であることに加え、同地域内の各地方政府が新エネ車産業の発展に熱心で、購入補助金など数多くの関連政策を実施しており、電気乗用車工場の立地として最適な選択肢だと評価されている。

 

(注)「自動車産業発展政策」の第47条では、自動車、モーターバイク、エンジンなどの新規投資について、投資総額または生産規模の下限が設けられているが、「電気乗用車企業の新設に関する管理規定」の第6条では、(電気乗用車の)新規投資プロジェクトの投資総額と生産規模は「自動車産業発展政策」で規定された下限を満たさなくてもよく、投資者が自主的に決められると規定されている。

 

(文涛)

(中国)

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