海外展開に高度外国人材の積極的採用を-ワークショップを名古屋で開催-

(日本)

新興国進出支援課、名古屋発

2016年08月22日

 ジェトロは海外展開を目指す中堅・中小企業などの支援を目的として、7月20日に名古屋市で「海外展開における高度外国人材の活用」ワークショップ(体験型講座)を開催した。このワークショップは名古屋大学、名古屋中公共職業安定所と協力し、高度外国人材活用分野の「新輸出大国コンソーシアム」(ジェトロが事務局)の専門家(エキスパート)を講師として実施した。海外展開を考える企業にとって、海外事情に精通した外国人は強力な助っ人になるが、社内体制やビザ手続きなどの受け入れ準備も必要になる。講義を通じて、参加者が自社の状況を見直し、外国人材活用に伴う留意点を確認した。

<高度外国人材とのこまめな意思疎通が重要>

 高度外国人材として企業の採用対象となるのは、外国人労働者90万人のうち167,000人。2014年度に日本で35,807人の留学生が卒業したが、就業割合は27%にとどまる。他方、日本での就職を希望する留学生は約6割に達しており、留学生の就業希望と実態が乖離している。

 

 留学生を採用する際の在留資格(いわゆるビザ)の変更については、企業側が把握しなければならない要件がある。小口隆夫エキスパートによると、変更に当たっては会社の規模に応じて、雇用者として会社の安定性や継続性を示す書類を提出する必要がある。被雇用者本人にも、専門性(学歴)の証明と従事する業務の関係性の明示が求められる場合がある。

 

 また、高度外国人材の多くは「技術・人文知識・国際業務」の在留資格に該当するが、この分野で取得するためには、高等教育を受けていることが要件となる。この点、日本の専門学校の学生を採用する際は注意が必要だ。専門士の称号がない場合は、高等教育とは認められない。

 

 さらに、申請に当たっては指定された書類を必要最低限そろえることのみならず、採用予定者の置かれている状況に合わせ、追加の説明資料を添付することも重要だ。

 

 高度外国人材の採用後にも留意点がある。久保田学エキスパートによると、多くの企業が外国人材に対して日本人社員と同様に扱うなど、特段の配慮を行っていない。しかし、それは外国人材側に日本人に合わせる配慮を強いていることを意味する。片方に合わせるのではなく、雇用者と被雇用者が妥協できる中間点を探り、歩み寄っていくことが大切だ。

 

 また、経済産業省の「平成27年度アジア産業基盤強化等事業(「内なる国際化」を進めるための調査研究)報告書」によると、「日本企業に対する不満」では昇進・給与、希望する業務へ配属されないなどの項目が目立っており、特にキャリア形成に関わる意識の隔たりが大きい。久保田氏は、社内の体制整備を進めるだけでなく、こまめな確認や相談、業務へのフィードバックを行い、認識のずれをなくしていくことが重要だ、と述べた。

 

505人中202人の留学生が就職>

 名古屋中公共職業安定所の高橋英治次長によると、2015年度は505人の留学生が名古屋外国人雇用サービスセンターに登録し、うち202人が就職した。40%の就職率は全国平均を上回っている。505人の留学生については、国籍では中国(323人)が突出して多く、次いでネパール(76人)、ベトナム(55人)の順。また、大学生が254人、専修学校生が158人、大学院生が86人、などとなっている。サービスセンターで実施している就職支援は、職業相談、職業紹介、留学生就職フェア、就職支援セミナーなどだ。

 

 また、名古屋大学学術研究・産学連携推進本部の深井昌克特任講師によると、愛知県には約20万人の外国人が居住しており、東京都、大阪府に次いで3番目に多い。このうち名古屋大学は2,079人の留学生を迎えており、2020年までに3,000人に増やす計画だという。

 

 名古屋大学の留学生のうち、アジア出身者は8割で、過半数が中国だ。このほか、韓国、インドネシア、ベトナムが一定の割合を占めている。専攻分野としては工学、法律、国際開発が多く、全学生の65%が大学院生(修士・博士課程)だ。名古屋大学では、ジェトロが実施した外国人向け試食会イベントに全面協力し、これまで3回実施された当該試食会イベントには、多数の同学留学生が参加した。今後は、ジェトロと協力し外国人留学生と企業の交流会の開催を検討しているほか、インターンシップの手配や就職支援を進めていく予定だ。

 

 なお、ジェトロでは、全国各地で同様のワークショップを開催している。

 

(河野尭広

(日本)

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