外資合弁企業にも建設資材の輸入販売を認可

(ミャンマー)

ヤンゴン発、途上国ビジネス開発課

2016年08月15日

 商業省は、外資企業に認めてこなかった建設資材の輸入販売を、ミャンマー企業との合弁企業に限って認める通達(No.56/2016)を7月7日付で発表した。外資企業の貿易業認可としては、2015年の新車(No.20/2015)、肥料、種、殺虫剤、医療機器(No.96/2015)に次いで3件目となる。これまで国内企業にのみ許可されていた建設資材の輸入販売が、今後は貿易業の許可を受けた外資合弁企業も可能となる。

<良質な建設資材の国内調達は困難>

 近年、ミャンマーへの外国企業進出が増加しているが、品質の良い建設資材を国内で調達することは難しく、多くは輸入に頼っている。外国企業による輸入販売は禁止されているが、商業省は国内でも品質が担保された建設資材が調達できるようにするため、外資合弁企業の輸入販売を認める通達No.56/201677日付で発表した。同通達では「貿易業の許可を受けた外資合弁企業が建設資材の輸入販売を行うに当たり、国内企業と同条件で認可する」と明記している。

 

 外資合弁企業による建設資材の輸入販売に関する条件は以下のとおり。

1)貿易業の営業許可を得ていること。

2)取引額は会社登記時の外資企業の資本比率に従い算出される額を上回らないこと。

3)取引額は外国企業が合法的に持ち込んだ外貨の額を上回らないこと。

4)合弁企業に対し、建設資材の卸売りと小売りの両方を認める。

5)輸出入事業者の登録申請の際、投資企業管理局(DICA)が発行したフォーム626と銀行取引明細書を提出すること。

6)輸入する建設資材は関係省庁が定める品質基準を満たしていること。

 

 しかし、通達では外資合弁企業が輸入可能な建設資材について、「国内需要や市場状況、国内取引状況などに鑑み必要に応じて変更していく」と記述しているだけで、具体的な資材リストは示されていない。また、上記(2)と(3)で上限が設けられている取引額が、年間の取引総額なのか1回ごとの取引額のことなのか、などについても不明確なままだ。

 

<日系企業の評価や見方はさまざま>

 ミャンマー日本商工会議所(JCCM)に加盟する313社のうち、建設関連は91社(20167月末時点)で、建設関連企業のミャンマー進出意欲は高い。本通達で建設資材を輸入販売できるようになるのは貿易業の許可を受けた国内企業との合弁企業に限定されているが、JCCMの建設部会に所属する企業のうち、国内企業との合弁形態を取っているのは数社にとどまる。

 

 日系商社からは「本通達により、ミャンマーで行う事業の幅が広がると感じている。国内企業との合弁も今後、検討していきたい」という声が聞かれる。その一方、ミャンマーに支店を置く建設企業は「外資合弁建設企業にも貿易業の営業許可が実際に付与されるかはDICAの最終判断による。本通達では輸入資材の販売形態が小売りと卸売りに制限されており、工事請負契約にのっとる建設資材の輸入が認められたわけではない。ミャンマーのカントリーリスクは依然として高く、国内企業との合弁は日系の建設企業にとって容易ではないことなどから、本通達の即時活用は難しい」と話す。

 

 また、国内企業との合弁会社を設立している日系建設企業からは「建設資材の輸入手続きは煩雑で、国内の輸入企業に頼らざるを得ず、内製化は難しい。しかし、ODA案件のように大型で日本からの建設資材を多く輸入する必要のある案件を受注した場合は、自社で輸入することを検討することになるだろう」とのコメントがあった。

 

 昨今、ミャンマーではベトナムからの鉄鋼製品(HSコード73類)の輸入が増加している。2010年に200万ドルだったのが、2014年には5,700万ドルと、4年で30倍近くに増加した。実際、ベトナム製の鉄鋼資材を使用する日系建設企業が増えており、「本通達により、ベトナムと国内の外資合弁企業による建設資材の貿易がさらに増えるだろう」とみる向きも多い。

 

<建設資材の工業規格制定を求める声も>

 また、日系建設企業から「空調などの建物設備も、外資企業による貿易が認められていないため、国内の輸入業者を仲介する必要がある。本通達がこうした建物設備の輸入も認めているとすれば、コストや手続き面で恩恵がある」との声が聞かれた。外資合弁企業が輸入可能な建設資材のリストが明らかにされることが求められている。

 

 なお、輸入販売の条件にある建設資材の品質基準について、ある日系建設企業は「建設資材の工業規格が制定されていないミャンマーでは、規格外の建設資材が市場に多く流通している。本通達で外資合弁企業のみに関係省庁が定める品質基準を課しても、国内企業は依然として規格外の建設資材を使用することが容易に予想される。建設資材の品質を担保するには、品質基準や工業規格を早期に制定し、外資企業だけでなく国内企業にも順守を義務付ける必要があるのではないか」と訴える。

 

(澤田茉季、クントゥーレイン)

(ミャンマー)

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