自由港の簡易ビザ制度の導入が再び延期に-自由港の対象区域は拡大-
(ロシア)
欧州ロシアCIS課
2016年07月05日
2015年10月に施行されたウラジオストク自由港に盛り込まれていた簡易ビザ制度は、2016年7月の導入が見込まれていたが、再び延期された。入国管理システムの改修、機密情報取り扱いのための認証取得や、不法移民流入対策のための追加作業が生じているという。また自由港の対象区域として、沿海地方以外で主要港湾がある行政区が新たに加わった。
<システム改修・認証取得に少なくとも半年必要>
ウラジオストク自由港では、規制緩和措置の1つとして、自由港対象区域にある港や空港などの国境通過地点から最長8日間の滞在で入国する場合は、同地点で簡易的にビザが発給される簡易ビザ制度が導入されることになっている。当初は2016年1月の導入を目指していたが、導入時期が7月に延期されていた(2016年4月8日記事参照)。
今回、再び延期になった理由として、極東発展省のキリル・ステパノフ次官は、ビザ手続きを電子的に行うために、入国管理システムや関係当局の情報システムの改修に加え、新しく導入するソフトウエアやハードウエアには機密情報を扱うための認証取得が必要となり、取得に少なくとも半年かかることを挙げた。
さらにステパノフ次官は、最近の国際政治情勢の悪化により不法移民が流入するリスクが高まっているため、システムに必要な対策も盛り込む必要があることも指摘した。入国地点での施設整備も遅れており、現在、準備ができているのはウラジオストク国際空港のみだ(極東発展省発表6月29日)。
簡易ビザ制度に関わる法律整備の面でも、時間的な問題があった。ノーボスチ通信(6月29日)は極東発展省関係者の話として、6月27日までの下院の春会期中に法案審議を間に合わせたとしても、直後の7月1日から性急に実施すると問題が生じる恐れを指摘した。ガルシカ極東発展相は、秋会期での法案提出を示唆した(タス通信7月4日)。
<簡易ビザ発給に国籍条件が導入される可能性>
ステパノフ次官はまた、簡易ビザ制度が適用されるのは、特定の国からの観光客、ビジネス関係者、投資家であることを明らかにした。これまで簡易ビザ発給の条件として、国籍については言及されてこなかったため、新たな条件として導入される可能性が出てきた。
ノーボスチ通信(6月29日)によると、簡易ビザ制度での入国までの流れは以下のとおり。入国する外国人は、入国の少なくとも3日前までに特設ウェブサイトで申請し、申請が審査された後、入国予定者は入国ビザを発給する通知を受け取る。ビザ発給に当たっては、領事手数料の支払い証明を電子的に送らなければならない場合もあるといわれるが、プリマメディア(6月29日)はガルシカ極東発展相の話として、手数料はかからないとしている。入国に際して、入国者はパスポートやその他の身分証明書、有効な保険証書、ビザ発給通知のコピーを提示する必要がある。
<自由港の対象を沿海地方以外にも拡大>
プーチン大統領は7月3日、自由港の対象区域を拡大する連邦法(2016年7月3日付第252-FZ号)に署名した。拡大の対象区域は、ワニノ行政区(ハバロフスク地方)、ペトロパブロフスク・カムチャツキー市(カムチャツカ地方)、ペベク市(チュコト自治管区)、コルサコフ市(サハリン州)、ラゾフスキー行政区(沿海地方)の5つで、いずれも域内に港湾がある。この拡大により、沿海地方以外の地域の行政区が初めて自由港の対象に入った。
(浅元薫哉)
(ロシア)
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