自由貿易試験区の外資規制をさらに緩和

(中国)

北京発

2016年07月29日

 国務院は7月19日、自由貿易試験区(以下、自貿区)における外資投資規制のさらなる緩和を図る決定通知を公表した。関連する行政法規、国務院文書などの執行を暫定的に停止・調整することで、自貿区内で外資単独によるオートバイや、鉄鋼生産などを可能にする。

<関連法規の執行を暫定的に停止・調整>

 国務院の公表した「国務院の自由貿易試験区において暫定的に関連する行政法規、国務院文書、国務院の批准を経た部門規則規定を調整することに関する決定(国発201641号)」は、自貿区における外資投資規制のさらなる緩和を図るもので、「外資企業法実施細則」など18の行政法規、「国務院の投資体制改革に関する決定」など4つの国務院文書、「外商投資産業指導目録(2015年改正版)」など4つの国務院の批准を経た部門規則規定の一部の執行を暫定的に停止・調整するものとなっている。

 

 国務院の関連部門や天津市、上海市、福建省、広東省に対して、適宜規則や規範性文書を調整し、それを実現する管理制度の構築を求めている。今後は、その試行状況を踏まえて内容を調整していく予定だ。

 

<外資単独でオートバイや鉄鋼の生産が可能に>

 外資投資規制緩和の具体的分野をみると、「自動車産業発展政策」の第48条や「外商投資産業指導目録(2015改正版)」の制限類目録で、オートバイ生産については、中国側の持ち株比率が50%を下回ってはならないとなっているが、これを自貿区内で暫定的に停止して、外資単独によるオートバイ生産企業の設立を認めるとした。

 

 「鉄鋼産業発展政策」の第23条第4項では、原則として外資のマジョリティー支配を認めないとなっているが、これを自貿区内では暫定的に停止して、外資単独のかたちで鉄鋼生産企業の設立を認めるとした。

 

 「外商投資産業指導目録(2015年改正版)」の制限類目録においては、ガソリンスタンドの建設・経営は中国側がマジョリティー支配することとなっているが、これを自貿区内では暫定的に停止して、外資単独でガソリンスタンドの建設・経営を認めるとした。

 

<旅行分野でも制限付き開放>

 このほかにも、「旅行社条例」の第23条において、外資旅行会社は中国人の出国観光旅行業務および香港、マカオ、台湾への観光旅行業務を扱ってはならない(注)となっているが、これを自貿区内では暫定的に停止して、条件を備えた外資旅行会社に中国人の出国観光旅行業務(台湾を除く)を認めるとした。

 

 中国日本商会は、6月に発刊した中国政府への建議書の「中国経済と日本企業2016年白書」で、2011年に外資合弁旅行会社3社(うち1社が日系)に対して中国人の出国観光旅行業務取り扱いが試験認可されたが、それ以後は新たに外資旅行会社に同業務が認可されておらず、外資単独の旅行会社に対して中国人の出国観光旅行業務取り扱いの開放を求めていた。自貿区内という制限付きながら、建議書の要望に沿い進展したかたちだ。

 

 なお、同決定に基づき実施される投資規制緩和措置は51項目に及ぶ。

 

(注)ただし、国務院が決定した、または中国が締結した自由貿易協定、ならびに緊密な経済貿易関係の確立に向けた中国と香港、マカオの計画に別途規定がある場合は除く。

 

(宗金建志)

(中国)

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