企業ニーズに合わせた採用支援・労働者育成プログラムを提供-サウスカロライナ州が外国企業誘致へ積極策-
(米国)
ニューヨーク、アトランタ発
2016年04月01日
日系製造業による米国南部への新規投資や移転が近年、多くみられる。サウスカロライナ州は、ニッキー・ヘイリー州知事(共和党)のイニシアチブの下、外国企業の誘致を積極的に進めてきた。企業集積が進む同州の動向や州政府による労働者育成の取り組みを紹介する。
<日本企業60社が進出し1万5,000人を雇用>
サウスカロライナには、BMW、ボルボ、ダイムラーなどの自動車メーカーをはじめ外国企業の生産拠点が多く集積している。同州商務省によると、IBMプラント・ロケーション・インターナショナルの調査で、住民数に占める外国企業の被雇用者数の割合で同州は全米1位だ。米商務省国際貿易局(ITA)によると、外国企業の被雇用者数は約12万7,000人(2013年時点)に上る。
サウスカロライナ州北部(アップステート)は特に、製造業の集積地として知られる。地域経済開発機関のアップステートSC連盟によると、同地域には約60社の日本企業が進出しており、1万5,000人を雇用している。富士フイルムのインクジェット用印刷紙などの工場、ブリヂストンのタイヤ工場のほか、コベルコ建機や京セラなどが生産拠点を置いている(表参照)。アップステートSC連盟代表兼最高経営責任者(CEO)のジョン・ルマス氏は、「メキシコなどと比較して労働コストは高いが、良質な労働者の存在により生産性の高い工場が実現できる」と製造業立地先としての魅力を語る。
2015年11月には東レが、ボーイングからの1兆3,000億円以上の大型受注を受け、同地域に炭素繊維の新規生産拠点を設立すると正式に決定した。投資額は500億円以上に上る予定だ。ヘイリー州知事は、東レ新工場の地鎮祭(2016年1月19日)で「東レが正しい決断をしたことをわれわれはこれから証明しなくてならない」と述べ、同社のサウスカロライナでの事業への継続的な支援を約束した。同知事は2011年1月の就任以来、投資誘致に積極的に取り組んでいる。
<州内の技術専門学校16校と提携>
ヘイリー州知事はまた、日本メディアの取材に対して「われわれは企業ニーズに合わせてカスタマイズした研修プログラムを提供している」として、同州が労働者の育成に力を入れていることを強調した。東レに対しても、州政府のスタッフを日本の本社に派遣し、同社が必要としているトレーニング内容を学んだ上で、サウスカロライナ州での研修プログラムを行うと述べた。
州政府は、同州での新規投資や事業拡張を行う企業に対して、「レディSC(ready SC)」という採用支援・労働者育成プログラムを提供している。1961年から続く同プログラムは、雇用者数などの一定要件を満たすことを条件に対象企業を認定し、州内の16の技術専門学校と提携した上で、個別企業ニーズに応じた支援を行うもの。最近は92社に対して支援を行い、4,700人に対して研修を実施した。このプログラムを利用した企業には、BMW、ボーイング、キャタピラー、ボッシュ、ゼネラル・エレクトリック(GE)、ミシュランなどがある。
(森則和、鈴木敦)
(米国)
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