駐在員事務所に関する新政令を公布-3月10日から施行、要件を一部厳格化-

(ベトナム)

ハノイ発

2016年03月02日

 ベトナム政府は1月25日付で外国企業の駐在員事務所・支店設立に関する政令07/2016/ND-CP号(以下、政令7号)を公布した。同政令は、現行の政令72/2006/ND-CP(以下、政令72号)に代わり、3月10日から施行される予定だ。日系企業において案件が多い駐在員事務所設立に関し、政令7号では活動内容や設立要件などが一部厳格化されており、注意が必要だ。

1つの省・市で同じ名称の事務所を複数設置できず>

 政令7号では設立要件について、「ベトナムが加盟する国際条約に合致する活動内容であること」との条文が追加されており(74項)、逆に「活動内容が国際条約と合致しない場合には関連当局の承認が必要」とされている(75項)。この「国際条約」が何を指すのか、政令7号では明文化されていない。

 

 また、外国企業は1つの省・中央直轄市に同じ名称による複数の駐在員事務所を設置することは認められない(32項)、と規定された。

 

 駐在員事務所の活動内容に関しては、(1)連絡事務、(2)市場調査、(3)本社ビジネスの活動促進が挙げられている一方(30条)、政令72号にあった「ベトナムのパートナーまたはベトナム市場に関連して締結された外国企業の契約履行の実施監督」業務については列挙されていない。

 

<所長不在時には書面による委任を義務化>

 駐在員事務所長がベトナムを離れる場合、本社の事前了解を前提として書面により他者に権利義務を委任することが義務付けられた(333項)。委任期間を経過しても所長が戻らず、追加の委任状が作成されていない場合には、所長が戻るまで、または本社が新しい駐在員事務所長を選任するまでの間、受任者が権利義務を行使することができる(334項)。所長が委任行為を行わずに30日以上の期間ベトナムを不在とする場合や、死亡、失踪、行為能力喪失などがあった場合には、本社は別の者を所長として選任する必要がある(335項)、と規定された。

 

 また、駐在員事務所の設立認可申請に際して、所長のパスポートの公証写しと事務所設置予定場所の賃貸契約書・覚書などの書類提出が必要となった(101項、2項)。

 

 他方で、有効な申請書類の受理から7営業日以内に、審査当局が設立許可(または不許可)の書面通知をすることとなり(113項)、従来の15日間から審査・発給期間が短縮されている。

 

<企業は時間的余裕を持った対応を>

 本改正により、駐在員事務所の管理を厳格化していく政府の意向が読み取れることから、企業としては進出検討段階から法人形態を慎重に見極めつつ、既存の駐在員事務所の見直しについても検討が必要なケースも想定される。

 

 一方、前述した国際条約の規定のように、本政令では要件が十分に判明していない部分があり、今後、早急な施行通達の公布が待たれるところだ。また、現行の政令72号下においても、本社の定款など進出先の省・市によって要否が分かれる書類が散見されたことから、事前に申請先当局との間で提出書類などに関する確認を行うことが望ましい。3月の施行日からしばらくの間は混乱が予想されるため、企業にとっては時間的余裕を持った対応が求められる。

 

(竹内直生)

(ベトナム)

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