自動車などの内国税減免、輸出税を撤廃
(アルゼンチン)
ブエノスアイレス発
2016年02月12日
政府は、自動車などに課される内国税の減免や工業製品にかかる輸出税の撤廃を発表した。自動車産業をはじめ国内製造業を活性化し、中長期的な成長を見据えた投資拡大につなげたい考えだ。
<生産・販売の促進と投資拡大が狙い>
2016年1月6日付政令第11/2016号によると、自動車や二輪車に課され、奢侈(しゃし)税として知られる内国税の税率が引き下げられるとともに、課税対象最低金額が引き上げられた。改正前は30~50%が課されていたため、国内で販売される自動車価格の引き上げ要因になり、販売不振につながっていた。同政令によると、国内価格が35万ペソ(約280万円、1ペソ=約8円)以下の自動車は課税対象から外れた。改正後の税率は、35万~80万ペソの自動車には10%、80万ペソ以上の場合は20%となる。フランシスコ・カブレラ生産相は今回の措置を、自動車産業の生産・販売促進および投資拡大が目的だと説明している。内国税の減免措置は2016年6月30日まで。
ただ、2015年12月に行われた通貨ペソの切り下げ(2015年12月28日記事参照)により、高級車のみならず大衆車も切り下げ前と比べて販売価格が9~15%値上がりしている。特に、ブラジルやメキシコ以外の自動車協定を締結していない国・地域からの輸入に対しては、輸入税35%、付加価値税21%のほかにも州税を含む高い税率が課されるため、内国税減免の恩恵は限定的だ。
<工業製品の輸出促進を目指す>
政府はまた、2015年12月10日付政令第160/2015号で、自動車および自動車部品などを含む工業製品の輸出税を免除することを発表した。工業製品の輸出促進を図るのが主な目的とされる。政府は輸入に関して、2015年12月に新たな輸入管理システム(SIMI)を設けて手続きの簡素化を図るとともに、関連する規制緩和策を打ち出している(2015年12月24日記事参照)。輸入の円滑化が期待される中、輸出促進策が打ち出されたことで、組み立て拠点としてのアルゼンチンの位置付けが見直されることが期待されている。
なお、2016年1月には、約1,400品目に対して非自動輸入ライセンス制度が導入されており(2016年1月26日記事参照)、一部完成車や自動車部品が輸入ライセンス取得の対象となっている(表参照)。対象品目の中には、排気量が3000ccを超える乗用車および2500ccを超えるディーゼルエンジンの乗用車が含まれている。自動車専門誌によると、同輸入ライセンスの取得が必要な日系メーカーの車種もある。
国内の民間調査会社やメーカーによると、2016年の自動車の年間販売台数は60万~65万台にとどまる見通し。経済低迷や高インフレの改善には時間を要し、主要輸出先であるブラジルの景気回復のめども立っていないためだ。民間調査会社アベセブは、年間販売台数は58万台と予測しているが、政府の政策を評価し2017年に向けた回復を期待している。政府は今後2年間、メーカーなどが約38億ドルの投資を計画しているとしており、カブレラ生産相は国内の生産能力向上に期待を示している。
(山木シルビア)
(アルゼンチン)
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