医薬品や食料などの輸入・販売は念入りな下準備が重要-中南米における基準・認証制度の動向-

(コロンビア)

ボゴタ発

2016年01月25日

 コロンビアでは医薬品、食料、飲料など人体に影響のある製品の輸入・流通・販売は政府の規制対象となる一方、認証に当たり必要条件は製品ごとに異なる。コロンビア市場に参入するには、薬事規制や試験検査成績など製品の安全性に関する情報を考慮する必要があり、念入りな下準備がカギとなる。

<南米で最も厳格な書類社会>

 現地の弁護士によると、コロンビアは南米で最も厳格な書類社会といわれており、法律で規定された書類の提示に柔軟性はほぼない。製造・輸入・流通における商品化の許可・適用も例外ではなく、特に人体に直接影響のある製品(注1)は監督機関である医薬食料品監督庁(INVIMA)での衛生登録(Registro Sanitario)が必須となっている。

 

 同登録に際しては、要件の厳格さ、法定審査期間、有効期限(510年)などがリスクの分類に応じて異なる。また、コロンビアでの販売が許可された衛生関連製品には全て、INVIMAの認証する衛生登録ラベルが貼付された状態で流通(販売)されなくてはならない。

 

<衛生登録取得は品目に応じ異なる様式>

 衛生登録を取得するには品目に応じて2つの様式がある。医薬品、医療機器、アルコール飲料、人体が摂取する天然製品、ホメオパシー(自己治癒力を使う同種療法)に関する製品は従来型衛生登録(Control Previo)として申請され、通常3ヵ月程度の厳格な調査が実施される。加えて調査中、INVIMAおよび第三者認証機関は申請内容に関する追加情報を照会する権利を有する。

 

 他方、清掃・衛生商品、食料、化粧品、リスク分析が低いと判断された医療機器類は、迅速なかたちの自動衛生登録(Registro Sanitario Automatico)の適用が可能だ。従来型との違いは、必要書類をそろえて提出し申請することで、書類の詳細な分析前に約72時間で衛生登録が完了する点が挙げられる。ただし、従来型と同様にINVIMAは、自動衛生登録後であっても追加情報の照会を申請する権利を有する。また、いずれの場合も衛生登録は、以下の法的必要書類が基礎情報として求められ、全ての書類は外国語の場合、コロンビア政府公認通訳士による翻訳を添付した上でアポスティーユ(公印確認)を付けなければならない。

 

○法的必要書類(Documentos Legales

1)第三者が手続きを代行する場合の委任状

2)衛生登録申請手続き行政手数料の振込証明書

3)製品が人体への影響がないことを明記した輸出元国による自由販売証明書(原本)。有効期限が書面に明示されているもの、あるいは発行日から3ヵ月未満のもの。機材の場合は型番および製造番号が明示されるか、その他の場合は名称やメーカーなどタイプ別に関連情報が記載されなくてはならない。

43ヵ月以内に発行された輸入元の会社存在証明書

5)輸入元への許可証(製造者または許可を得た者が、その製品の登録・輸入・販売の権限を流通者に与えたことを示す書状。代表者の氏名、居住地、電話・ファックス番号、メールアドレスなどを明記)

6)関係証明書。親会社やその部門、製造場所の関係を示すもの(該当する場合のみ)

7)医療機器の場合、品質管理システム証明書。自由販売証明書発行元の衛生当局、あるいはISO13485の規定する認証機関により発行された輸入者に対する貯蔵・コンディショニング能力証明書(注2)、あるいはCEマーキング(品質管理システムに関する宣言、品質保証など)、適正製造規範(Buenas Practicas de ManufactraBPM)も対象。

 

<製品によって異なる技術的必要書類の項目>

 上記を基礎書類とした上で、各製品によって異なる技術的必要書類(Documentos Tecnicos)の提出が必要となる。化粧品の場合、a.INCI名(国際命名法ルールに基づいた化粧品成分の国際的表示名称)で規定された表示、b.製品の物理化学的・微細的表示(アンデス共同体の規定にのっとる)、c.代表的なラベリングの写し、d.容器の素材仕様書、e.使い方表示、がそれに当たる。

 

 同手続きによりコロンビア国内での販売が許可された場合は、a.製造責任者名、b.原産国名、c.内容量、d.国際基準に基づく取り扱い注意の表示、e.ロット番号、f.コロンビアが規定する衛生義務通告の数、g.成分リスト、を表示した法定表示ラベルを貼付した上で流通が許可される。

 

 既に複数の日本企業が進出している医療機器の場合、技術的必要書類の項目は多岐にわたる。a.製品仕様書(用途、主要部品表含む)、b.技術的調査および分析確認、c.代表的なラベリングの写し、d.保守マニュアル(生物医学機器の場合)、e.製品番号表、f.殺菌方法と製品寿命(該当製品のみ)、g.リスク分類についてのルール、h.他国での販売履歴、i.コロンビア当局が認定した医療機器に関する国際法(GMDNECRIなど)、j.原料、仕掛け品などの仕様書、k.製造工程ダイアグラム、l.適合宣言、m.製品の安全性を保証する科学的情報(該当製品のみ)、n.臨床研究結果(該当製品のみ)、o.製造工程の全体あるいは一部の具体的企画一覧、p.製品のリスク分析、その危険回避の方法(危険度分類による該当製品のみ)、q.製品の最終処分、r.ラベル表示が全てされたサンプル、などだ。また、これさえあればいいという書類ではなく、INVIMA側の自主規制により上記以外の追加書類が求められる可能性に留意したい。

 

 さらに、日本企業の関心が高い食品の技術必要書類としては、a.代表的なラベリングの写し、b.製品仕様書(内容量など基礎情報を含む)、c.貯蔵・コンディショニング能力証明、d.製造工程ダイアグラム、e.製品の消費期限、などが挙げられる。また、食品に限り、2013年の保健・社会保障省2674号に基づき、リスクが中程度のものは衛生登録ではなく衛生許可(Permiso sanitario)、リスクが低いものについては衛生通知(Notificacion sanitaria)の登録方式が規定され、販売・流通を希望する企業はリスクに応じていずかの登録が義務となる。衛生登録が有効期限5年であることに対し、衛生許可、衛生通知はそれぞれ7年、10年と異なっているが、法的必要書類、技術的必要書類の提出は不可欠だ(条件はそれぞれ異なる)。食品のリスク分類については、2015年の保健・社会障省決議719で規定している。

 

<ビジネス上の阻害要因との指摘も>

 これらの手続きをみる限り、全ての製造業者・輸入業者は最低限の製造プロセスの条件を備えていなければならず、提出書類も多岐にわたるため、コロンビアにおけるビジネス展開上の阻害要因と指摘する外国企業も多い。

 

 特に外国企業が苦戦するのは自由販売証明書(CVL)だ。衛生登録に際し必須条件であるものの、INVIMAは中央省庁発行が望ましいとしており、過去には東京商工会議所がサインした証明書が受理されず、最終的にINVIMAと日本の厚生労働省間で効力を確認する事態に発展したこともあった。また、INVIMAの各種申請料は毎年1月に改定されるものの、10月ごろ価格調整のための値上げが実施される可能性に留意したい。衛生登録取得が完了していなければ、再度値上げ分を銀行に振り込まない限り同登録調査が再開されず、ビジネスへの影響が懸念される。

 

(注1)衛生登録が必要な製品は次のとおり。薬剤、ワクチン、化粧品、食料、飲料、アルコール飲料、清掃・衛生用品、医療機器(バイオ医療機器を含む)、健康食品、ホメオパシーに関する製品、家庭用農薬など。

(注2)貯蔵・コンディショニング能力証明書(CCAA)とは、輸入業者が製品のトレーサビリティー、インフラ、人材、技術的能力などのINVIMAの試験を受け、合格の場合に発行される証明書。

 

(安心院茉里)

(コロンビア)

ビジネス短信 fbe52c007a06ed0b