関税免除でミャンマーからの輸入が急増-一般特恵関税制度18年ぶり復活の効果-

(カナダ、ミャンマー)

米州課

2016年01月07日

 ミャンマーに対する一般特恵関税制度(GPT)が復活して半年以上が経過し、貿易面で衣類を中心に輸入が増えるなど効果が表れ始めた。投資の面でも、カナダ政府が国内企業のミャンマー進出を後押しするなどの動きが出ている。

<農林水産品・食品を除き無税に>

 カナダ政府は2015325日、ミャンマーに対するGPTの復活を決定した。中でもミャンマーは後発開発途上国(LDC)待遇となるため、供給管理制度の対象となる農林水産品・食品を除き、4月以降ミャンマーからの輸入関税が無税となっており、政府は、ミャンマーからの輸入で年間24万カナダ・ドル(約2,064万円、Cドル、1Cドル=約86円)が減免されると推定している。なお、カナダ統計局によると、2014年の輸入額は約1,410Cドルとなっている。

 

 カナダはミャンマーの人権侵害を根拠に、同国に対するGPT1997年に停止したが、ミャンマーが2010年の選挙を契機に、規制緩和や経済改革を進め、政治犯を釈放するなど変化を遂げつつあることを理由に、20144月に経済制裁を緩和し、大使館を開設するなどしてきた。18年ぶりのGPT復活もその一環だ。

 

<衣類を中心に輸入額は93%増>

 カナダの対ミャンマー輸入額は、ここ数年回復傾向にある(図1参照)。衣類(HS61類、62類)を中心に6,000Cドルに達した2000年ごろをピークに、一時はほぼゼロにまで落ち込んだものの、2012年から2014年にかけては、野菜(07類)や魚・甲殻類(03類)を中心に堅調に伸びている。これら品目の多くは一般税率でも無税のものがほとんどで、GPTが停止されていたが輸入は伸びていた。

 GPT復活後の貿易統計をみると、20154月から10月まで、カナダの対ミャンマー輸入額は毎月、前年同月比プラスを記録している。2015410月の輸入額は前年同期比93.2%増の約1,692Cドルに達し、2014年の輸入総額を上回った。

 

 主要品目別にみると、衣類は前年同期比85.2%増の約608Cドルとなり、輸入全体の伸びを牽引している(図2参照)。例えば、女性向けの上着(HSコード620293)の輸入は、410月で約67Cドルと前年同期比で約2倍以上伸びている。

 衣類の一般税率は、一部無税の品目などがあるものの、多くが18%となっている。仮に衣類に一律18%の一般関税がかかると計算すると、410月に約109Cドルの減免効果があったことになり、これは政府が推定した年間24Cドルを大きく上回る。そのほか、一般税率が20%の品目が多い履物(64類)の輸入も徐々に伸びるなど、GPT復活の効果がみられる。

 

<投資面でも官民連携で取り組み>

 政府は国内企業の対ミャンマー投資を促進している。20129月、エド・ファスト貿易相(当時)は20社近い企業の経営層を引き連れ、ベトナム、カンボジア、タイ、ミャンマーを訪問し、「カナダ企業が市場に参入する際には信頼の置けるパートナーが見つかるよう努力を続けていく」と語った。同行した企業には、ノバスコシア銀行や通信のスカイウェイブ・モバイル・コミュニケーションズ、金融保険のマニュライフなどが名を連ねた。

 

 そのうち、マニュライフはアジア12ヵ国で事業を展開し、20145月には70年ぶりとなるヤンゴン駐在員事務所を開設した。ロバート・クック社長は「ミャンマーはかつてマニュライフがアジアで最初に築いた市場の1つだ。急増する人口や経済面での好ましい変化から、ミャンマー市場がわれわれの未来の一部となるだろう」と語った。

 

(藪恭兵)

(カナダ、ミャンマー)

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