船積み書類の受け渡し方法が変更に-中銀が通達、L/C開設の保証金も引き上げ-
(エジプト、中東)
カイロ発
2016年01月22日
エジプトの中央銀行が国内銀行向けに発出した2015年12月21日付の通達によると、国内銀行は輸入決済において、船積み書類を輸入者から受け取るのではなく、輸出者が利用する国外銀行から直接受領することが義務付けられた。施行までの猶予期間は通達の日付から1ヵ月。同通達では、信用状(L/C)開設にかかる保証金を50%から100%へ引き上げると規定、2016年1月1日から施行されている。
<輸入者に送付していた船積み書類は銀行経由に>
中銀の国内銀行に対する通達(公式英訳版)の概要は以下のとおり。
(1)輸入決済は、エジプト国内銀行が輸出者の取引銀行(国外)から直接船積み書類を受領した場合にのみ行うものとする。顧客(輸入者)が輸出者から直接受領した船積み書類による決済は認められない。本規制導入までの猶予期間は、通達の日付から1ヵ月間とする。
(2)エジプトの銀行は、2010年6月28日付第86号通達と、それに続く通達のとおり、L/C開設に当たって保証金を従来の50%に代わり100%受け取ることとする。本規制は、一般企業、政府系機関および政府系機関へのサプライヤーの別にかかわらず適用される。
ただし、医薬品、ワクチンおよびそれに関連する化学品、乳幼児用粉ミルクの輸入に関するL/C開設は、保証金引き上げの対象外とする。
保証金の引き上げは、2016年1月1日以降に行われる輸入決済に適用される。輸入者が銀行から与えられた信用枠を保証金の引き上げに充てることは認められない。コマーシャルペーパーや有価証券によって保証された信用枠の利用も認められない。
なお、工場が生産資材を輸入するといったL/Cの開設については、上記信用枠の利用は制限されない。
(3)L/C開設に100%の保証金を必要とする貿易目的の輸入決済については、一時的外貨信用枠の供与による借り換え(リファイナンス)を禁ずる。ただし、貿易外取引、基礎物資・食品、医薬品・ワクチンおよび関連化学品、乳幼児用粉ミルクの輸入については免除する。
<日本の輸出者は取引銀行に詳細確認を>
上記3点のうち日本の輸出者が最も留意すべきなのは、1点目だ。電信送金(T/T)などの取引では、輸出者は国際宅配便などで船積み書類を輸入者に直接送付していたが、今後は銀行を経由しなければならない。輸出側の銀行がエジプトの国内銀行と為替業務の代行契約(コルレス契約)を結んでいない場合もあり、自社の利用銀行や取引先の利用銀行に詳細を確認し、対応を相談することが重要だ。
当地の金融関係者によると、今回の通達を受けた各銀行の対応としては、送金の受け付けをやめてL/Cに切り替える銀行もある。大手商業銀行のコマーシャル・インターナショナル・バンクは、送金は受け付けるが、船積み書類は輸出者の利用銀行から受け取ることとするなど、対応が異なるという。
なお、L/Cや手形引受書類渡し(D/A)、手形支払書類渡し(D/P)など、銀行経由で船積み書類を送っている取引については大きな影響はない。
<外貨節約と国内産業保護が通達の背景に>
中銀が今回の通達を出した背景には、国家経済の強化、地場産品の販売促進・外国製品に対する競争力の強化、銀行資金の社会開発への振り向けなどの狙いがあるとみられる。
(長谷川梢)
(エジプト、中東)
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