上海で中国工業博、日本の環境技術に高い関心

(中国)

上海事務所

2015年11月27日

 中国最大規模の工業総合見本市「第17回中国国際工業博覧会」(以下、工業博)が11月3~7日、上海市の国家会展中心(センター)で開催された。ジェトロは34社・5団体を取りまとめてジャパンパビリオンを出展、会期中に8億7,500万円の商談成約額(見込みを含む)を達成した。また、主催したセミナーも盛況だった。

<開会式に馬凱副総理も出席>

 113日に行われた工業博開会式には中国共産党の馬凱・中央政治局委員兼副総理や、韓正・中央政治局委員兼上海市党委員会書記、楊雄・上海市長らが出席し開会を宣言した。今回の工業博は「イノベーション・スマート・グリーン」をテーマにして、国家会展中心の9つのホールなどで「コンピュータ数値制御(CNC)工作機械・金属加工展」「工業自動化展」「情報通信技術応用展」「工業ロボット展」「科学技術革新展」「工業環境保護技術・設備展」(以下、環境展)などを開催した。展示面積は過去最大規模の23万平方メートルで、主催者によると、5日間の会期中に28ヵ国・地域の2,270社・団体が出展し、来場者数は前年比12.4%増の136,000人だった。

 

 工業博はこれまで上海市浦東区の新国際博覧センターが会場だったが、今回は201410月に完成した青浦区の国家会展中心で開催された。同センターは展示面積50万平方メートル(延べ床面積147万平方メートル)と世界最大のコンベンションセンター。国家商務部と上海市政府が2010年に締結した「部・市共同で中国博覧会総合会展プロジェクトを建設する協力協議」に基づき、共同建設した上海市土地開発プロジェクトの一環だ。ちなみに、日本最大の展示会場である東京ビックサイトの、展示面積8万平方メートル(延べ床面積23万平方メートル)。

 

 また期間中に、上海市との友好都市35周年記念で来訪していた大阪府の植田浩副知事も視察に訪れ、小栗道明ジェトロ上海事務所長、周正・上海東浩蘭生国際服務貿易(集団)総経理の案内で工業博を見学した。

 

 環境展には、空気対策・煤煙浄化、産業の省エネルギー、工場の清掃の3つの展示エリアが設けられ、日本、イタリア、米国、ドイツ、韓国、デンマークなど8ヵ国から計142社・団体が出展した。汚水汚泥処理、大気汚染対策、土壌修復、省エネルギーボイラー・冷却ボイラー、農村汚水問題解決ソリューション、工業清掃機などが展示された。

 

<ジャパンパビリオンに34社・5団体が出展>

 ジェトロのジャパンパビリオンは、2008年に初出展し今年で8回目。日本企業34社・5団体(岐阜県、長崎県、横浜市、新潟県、大阪市)を取りまとめて出展した。大気、水、土壌、自治体、その他の5つの展示エリアがセミナー会場を囲むように配置され、汚水汚泥処理、大気汚染対策、土壌修復、省エネルギー、エコなどの分野における最先端の技術・製品・サービスを展示、PRした。展示品には、省エネ設計の産業排水汚泥遠心脱水機、揮発性有機化合物(VOC)処理装置、廃棄物破砕機があり、また、重金属汚染土壌の修復技術、木粉ではなく石こう使用の住宅用エコ素材の紹介、化学品原材料の環境分析を行う新規企業もあった。

 

 会期中のジャパンパビリオン出展企業の商談件数は1,960件に上り、成約(見込み)件数は196件、成約(見込み)金額は約87,500万円に上った。出展企業からは「最大級の展示会だけあってコアな客が多く、特にVOCの規制が厳しくなることから塗装関連企業と具体的な商談ができ有益だった」「今回はマーケット調査、パートナー企業の募集が目的。代理店希望の会社が数社あり、今後の展開が期待できる」との評価が聞かれた。他方で、「展示会場が大き過ぎた上、同時に近辺で行われていた展示会があり、工業博への来訪者が前年と比較すると少なかった」「望んでいたエンドユーザーに出会えなかった」「(自社の)処理関連の部品および薬品の販売に興味を示した人が少なかった」などの声もあった。

 

<日本の環境技術をセミナーでアピール>

 ジェトロは会期中、中国国内で高い関心が持たれている水・大気・土壌について、工業博主催者や、環境関連の業界団体、政府機関、研究機関などと連携し、出展者の製品をPRするために、「汚染土壌・地下水の修復技術」「汚水汚泥処理技術および政策動向」「大気汚染防止政策および測定処理技術」をテーマにした3つのセミナーを開催した。また「環境適合型の製造方法とグリーンイノベーション」をテーマにした日中米の国際シンポジウムも開いた。

 

 セミナーなどでは、上海市または中国(または日米)の法制度および最新の発展動向を紹介した上で、出展者の日系企業が、中国の環境規制に対応した自社の製品・技術をPRした。特に大気分野のセミナーは、中国政府が微小粒子状物質(PM2.5)対策のために20152016年にかけてVOCを厳しく規制する方向なため関心が高く、VOC排出削減、連続モニタリングの義務化に悩む中国企業は、環境規制の内容や動向だけでなく、日本のVOC処理技術・設備についても熱心に耳を傾けていた。セミナーは6時間にも及んだが、100人規模の会場は常に満員で、環境分野への関心の高さがうかがえた。

 

(徐暁蕾)

(中国)

ビジネス短信 5a7793e8f3cc3333