農産物・食品の市場アクセス改善を期待-TPP大筋合意に外務省は「満足」-

(チリ)

サンティアゴ事務所

2015年10月15日

 環太平洋パートナーシップ(TPP)の大筋合意に関し、チリ外務省は満足のいく結果だったと発表した。その理由として、農産物・食品の市場アクセスが改善され、医薬品のデータ保護期間は現状が維持されたことや、チリにとってセンシティブな内容も適切に保護されること、などを挙げている。その一方で、TPPが中国との経済関係に及ぼす影響への懸念も聞こえる。

<バランスの取れた合意と賞賛>

 エラルド・ムニョス外相は「チリにとって、自国の利益を守る大変有益な合意に達することができて満足している。これにより、チリとアジア太平洋地域との関係が強化されよう。TPP21世紀の通商を規定する世界最大かつ最新の協定だ。近年まれにみる重要な多国間交渉の成果であり、チリはその加盟国になるのだ」と語った。

 

 アンドレス・レボジェド国際経済関係総局長も、「チリに大きな利益をもたらすと同時に、チリのセンシティブな内容も適切に保護することができ、バランスの取れた良い合意に達したと思う」と述べ、「バイオ医薬品のデータ保護期間に関しては、米国との2国間協定の定めにある5年間と、満足のいく結果となった。TPPはチリの貿易の成長、輸出の多様化に新たなチャンスをもたらすだろう。チリは既にTPP交渉参加国の全てと通商協定を締結しているが、協定の内容は異なっている。それがTPPにより農業・食品の除外品目が減少し、市場アクセスが改善される」とコメントしている。そして、その他の利点として、貿易の簡易化、検疫規則の改善、累積原産地規則の適用によりグローバル・バリューチェーンへ参加しやすくなることなどを挙げ、チリという輸出国にとって多国間交渉に参加することが重要だとして、今後もWTOのようにTPP加盟国以外の重要なパートナー国(例えば中国)も参加する多国間会合に出席すると述べた。

 

<対中関係への影響を懸念>

 一方、アレハンドロ・フォックスレイ元外相は、「TPPによりチリは21世紀のグローバル化という舞台の最前列の俳優となる。チリ企業は、国内や隣国のみならずアジア太平洋地域の企業との競争・連携といった課題の重要性を再認識させられる」としつつ、「これまで積極的に進めてきた中国との経済関係を維持するに当たりTPPの抱えるジレンマは問題となり得る。つまり、TPPには2つの側面がある。アジア太平洋地域における自由貿易の第一歩だが、米国にとっては中国の拡大を牽制する手段にもなる」と、TPPの意義を認めながらも慎重な姿勢を示した。

 

 リカルド・ウェーバー上院議員(与党)は、「将来の貿易規則を定めるTPPのような協定にチリが参加していることは重要だ」と述べるとともに、「協定本文の詳細を見て、知的財産(医薬品の特許の保護や違反に対する制裁)などチリの懸念事項に関する不安を取り除くことが必要」とコメントした。

 

 現地メディアの報道によると、与野党いずれも複数の議員が協定本文および交渉内容の公開を要求しているという。協定の最終文言はまだ公表されておらず、法的観点からの見直しが行われている。この見直しが終了すれば協定書に署名されるが、その後の手続きとして議会による認証がある。

 

(小竹めぐみ)

(チリ)

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