最低賃金など投資環境の整備に向けて直接対話-第12回日本カンボジア官民合同会議-

(カンボジア)

プノンペン事務所

2015年08月20日

 オールジャパン〔日本大使館、日本人商工会、国際協力機構(JICA)、ジェトロ〕で、投資環境の整備についてカンボジア政府に提案する場である第12回日本カンボジア官民合同会議が、7月29日に開催された。これまで議論されてきた最低賃金や電力問題に加えて、新たに税務登録で追加された手続きに関する問題点など16の議題が日本側から提示された。カンボジア政府側は各省庁から50人以上が出席し、それぞれの問題について担当省庁が回答もしくは今後の改善を約束するなど、活発な意見交換が行われた。

<オールジャパンでカンボジア政府に提言>

 カンボジアでは、政府民間フォーラムのワーキンググループや、税関と民間企業間のパートナーシップ(CPPM)など、官民が議論するための枠組みが幾つか存在する中で、日本大使館、日本人商工会、JICA、ジェトロが投資環境の整備について、カンボジア政府に提案する機会として日本カンボジア官民合同会議が定期的に開催されている。

 

 この官民合同会議は2009年からほぼ毎年2回行われており、過去11回の会議では、投資手続きのワンストップサービス強化や、投資適格案件(QIP)における優遇措置の明確化、通関手続きや労働許可取得手続きなどについて議論してきた。また官民合同会議から派生して、日系企業が講師となってカンボジア省庁関係職員に対して問題事例を紹介し、議論するセミナーを開催するなど、省庁の高官だけでなく、実務従事者に対しても意見具申する場へとつながっている。

 

<過去最大規模の参加、例年より明確な回答増える>

 第12回官民合同会議には、カンボジア側がソク・チェンダ開発評議会事務局長を筆頭に各省庁から50人以上、日本側が駐カンボジアの隈丸優次大使を筆頭に70人以上が出席し、過去最大規模となった。本会議に先立ち、日本側の中心組織である日本人商工会は、「労務委員会」「税務委員会」に加えて新たに「投資基盤整備委員会」を設置し、日本側からカンボジア政府へ提言する事項を精査するとともに、事前にカンボジア政府側へ提出した。このため、同日の本会議では例年に比べ、カンボジア政府側から明確な回答を得られるものが多かった。

 

 例えば、進出企業にとって最も影響のある「最低賃金の引き上げ」の手続きについて、労働職業訓練省から回答があった。これによると、同省でまず、現在の給与水準や生活費として必要な金額を試算し、労使、官民、労官の各2者間でそれぞれ協議する。その後、合同会合を経て、10月第1週の労働諮問委員会で引き上げ額を最終決定するとした。具体的には、他国の最低賃金に関する動向や、インフレ、生産性、競争性、経済へのインパクトといった複数の社会的・経済的基準を基にした計算式によって、合理的に決定するとした。さらに、労働職業訓練省高官は「科学的手法に基づいて決定するので、急に最低賃金が20%以上も上がるというようなことは起こらない」と回答した。

 

 そのほか、2015年度中の成立を目標としている新労働組合法や、就労許可証(ワークパミット)のオンライン申請の計画、行政サービスの料金体系の省令による明示などについて、カンボジア政府側から進捗状況が報告された。

 

上田委枝

(カンボジア)

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